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山本弘著『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』感想。「今回のお題はミステリ。中でもライトノベルミステリや『パララバ』『タイム・リープ』『時をかける少女』などのSF青春ライトノベルの魅力が深く語られた一冊」

一般小説感想
07 /14 2016

山本弘著『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』読了。
好きな本を紹介しあうビブリオバトルを題材にした小説の三作目。

今回のお題はミステリ。
それも、自分が大好きなライトノベルミステリが中心になっている!

ビブリオバトルに出てきた本を紹介すると以下のものになる。

・『戦前の少年犯罪』
・『イニシエーション・ラブ』
・『男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。』
・『電氣人閒の虞』
・『毒入りチョコレート事件』
・『超・殺人事件』
・『ひとめあなたに…』
・『本当は間違っている心理学の話』
・『“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕』
・『仮題・中学生殺人事件』
・『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』
・『電送怪人』
・『パララバ ―Parallel lovers―』

で、ここからミステリ関係の本を抜き出してみたのがこれ。

・『イニシエーション・ラブ』
・『電氣人閒の虞』
・『毒入りチョコレート事件』
・『超・殺人事件』
・『仮題・中学生殺人事件』
・『電送怪人』
・『“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕』
・『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』
・『パララバ ―Parallel lovers―』

とまあ、ミステリ、それもライトノベルレーベルで出版されたミステリが多いのはラノベミステリ好きとしてはたまらない。

『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』は作者が桜庭一樹先生ということで有名だけど、『菜々子さん~』や『パララバ』なんかはミステリ好きでも読んでいないって人、多いと思うからな。

作中でも書かれているけど、ライトノベルレーベルだとそのジャンルが好きな人(ミステリ、SFなど)でも手に取らないことが多いんだよね。

中でもページを割かれて紹介していたのが『パララバ』
パラレルワールドを題材にしたフーダニットなんだけど、この作品を紹介すると同時に作者の静月遠火さんが影響を受けた『タイム・リープ』(高畑京一郎著)と『時をかける少女』(筒井康隆著)」にまで言及されたことが嬉しい。

『パララバ』は作者が『タイム・リープ』に影響を受けて書かれたものであり、『タイム・リープ』は『時をかける少女』に影響を受けたものだと、ライトノベルにおけるSF青春ものの流れを解説してくれるところは読んでいて嬉しくなった。

古い作品まで濫読している人は意識するしないに関わらずなんとなくは理解しているだろう流れだけど、あまり読まない人はそういった過去の名作に触れる機会がないからねえ。

ミステリや小説に限らず、アニメ、マンガゲームなどすべての娯楽作品は過去から連綿と積み重なったものがあったからこそ生まれたものなので、そのことを紹介されるのは本好きとしてとても嬉しいものがある。

そういったあまり知られていない名作や、誰もが知っている名作から生まれた新作を紹介できるのがビブリオバトルの良いところなんだろうな。


ミステリを多く扱っていたので、ミステリ好きならニヤリと出来るネタもちらほら。

179Pより引用

「ボクは蘇部健一の『六枚のとんかつ』がさっぱりダメだったんだけど、彼はあれがいいって言うんだ。逆に京極夏彦の『姑獲鳥の夏』は、ボクは最高だと思ってるけど、彼はピンとこないって」



なんかはミステリ好きなら間違いなく笑えるでしょう。
(『六枚のとんかつ』はかの島田荘司氏が「ゴミ」と一言で切り捨てた伝説のバカミスであり、『姑獲鳥の夏』はアンフェア論争を巻き起こした京極夏彦のデビュー作)

とりあえず、このふたりには四大奇書と『コズミック』と『翼ある闇』でも読ませてみればいいんじゃないかな?
(争いのリンゴを投げるかの如く所業)

今回も小説が好きな人なら間違いなく楽しめるオススメの一冊だったね。
ライトノベルミステリにはこれ以外にも

久住四季(『トリックスターズ』『ミステリクロノ』など)
野崎まど(『[映] アムリタ 』など)
甲田学人(『断章のグリム』)
今野緒雪(『マリアさまがみてる』)
玩具堂(『子ひつじは迷わない』
河野裕(『サクラダリセット』)
御影瑛路 (『空ろの箱と零のマリア 』)
明月千里(『月見月理解の探偵殺人』)
二丸修一(『ギフテッド』)
田代裕彦(『平井骸惚此中ニ有リ』など)

などとミステリ好きでも読んでいない人が多い作品がいっぱいあるのでオススメですよーと自分もたくさん紹介してみたくなりましたとも。

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感想リンク。
『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』
『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』
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山本弘『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』感想。「ビブリオバトルを題材にしたジュブナイルの第二作。今回のテーマは『恐怖』と『戦争』。『艦これ』を絡めてフィクションの重要性を語るところはお見事」

一般小説感想
08 /13 2015

本を紹介しあうビブリオバトルを取り扱った青春小説の第二段。
『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』読了。

今回のは1巻よりも好きだな。
1巻は山場を用意するためにあからさまな悪役を用意したものの、今回は純粋にビブリオバトル&青春小説という形になっていた。
1巻は1巻でビブリオバトルの悪用法を描いていたので悪くはなかったとは思うけど、個人的にはこっちの方向性のほうが好みにあっている。

今回のビブリオバトルのお題は「恐怖」と「戦争」

どちらも色々な切り口がありそうなものの、こう広げるかあ。
紋切り型になりやすい怖い話を、たんなる怪談ではなく生活保護を受けられない人という身近にある恐怖から、およそ人間がもっとも恐れるだろう恐怖にまで話を広げるところはお見事。

ビブリオバトル後に同作者による『神は沈黙せず』の名前も出ているけど、これも読み方によっては最大級のホラー小説だよなあ。

そして、本書のメインテーマである「戦争」
これに対するアプローチは山本弘の本領発揮といったところ。

戦争中の虐殺や不幸な死を忘れようとしたり陰謀論でうやむやにしようとすることへ怒りを見せたりするなど、メッセージをストレートに伝えてくる。
1巻のころからそうだけど、この武人の主張はかなり作者の意見が出ているように感じられる。

そういった重苦しい話を用意しつつ、『艦これ』の話題まで交えて現代青春小説にしているところが本書最大の見所。

『艦これ』は実際にあった戦艦や戦争を題材にしているだけに、不謹慎だという意見も出ているゲームである。
そのため、人によってはやたらとこのゲームを敵視することがあるものの、これが戦争を知る入り口になるということもまたひとつの事実。

これによって戦争を賛美する人間が出てしまうかもしれないという意見もあるが、そんなことはノンフィクションだって同じこと。実際にどの程度影響を及ぼしたのかなんていうデータは取れないんだから、悪影響うんぬんという意見は妄想でしかない。

フィクション・ノンフィクション問わず、それらに触れたあと受け手側が戦争を好きになるのも嫌いになるのもその人の自由。
一番悪いのは、知識を持たないことだという主張にはとても強くうなづける。

この『艦これ』を交えた主張の中で、もっとも際立っているのがこれでしょう。

196~197Pより引用

「大和の最期に感情移入する人の多くは――僕もそうだけど――決して二七四〇人の死者を悼んでいるわけじゃないんだ。大和そのものに感情移入しているんだよな。乗員じゃなくて、生命のない鉄の塊に」


「僕も戦争の実写映像は何度も観たことがある。戦闘機が撃墜されたり、艦が爆発したりする映像。あるいは広島に原爆が投下された瞬間の映像――実際に人が死んでいる映像をな。長門が沈んだビキニの核実験の映像も観たことがある。でも、そんなので泣いたことは一度もない。だって感情移入できないもの。
 だけどな、艦娘が沈む映像は泣けるんだよ。本物の人間の死よりも、ずっと」




しかし、これを読んでしまうと、
「自分なら、好きな本をどう紹介するか?」
とか色々と考えてしまうな。

ビブリオバトルには参加したことがないものの、こうやってブログにテキトーな感想をつらつら書いている身だけに本を紹介したいという気持ちはそれなりにあることだし。

そんなこんな。
ライバル校にミステリ好きな人たちも出てきたので、ミステリスキーとしてはそのあたりも注目したいところです。
続きも楽しみだな。

以下、感想箇条書き。
・ある人物が非童貞というあたりが山本弘らしいと思ったり。そういえば、とある女性も普通に彼氏持ちだし、このあたりも山本弘っぽい。

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感想リンク。
『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』
『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』

山本弘『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』感想。「『仮面ライダー響鬼』は全何話だ?」

一般小説感想
08 /12 2015

山本弘『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』読了。
タイトルに書いたのは作中でもっとも印象に残った言葉です。
(答えは読んで確かめましょう。48話じゃないからな!)

五分の間に自分が好きな本を紹介するというビブリオバトル。
自分もどういうものかは知っていたものの、実際に目の前で見たことはないというこれ。
バトルとは名がつくものの別に勝敗を競うものではなく、いわゆる「楽しんだもの勝ち」というゲームっぽさが魅力のひとつ。

ビブリオバトルを題材にしているので、作中に出てくる本の内容が面白さを左右すると思われるのだが、そこはさすがの山本弘。
SFからライトノベル、ノンフィクションに科学、雑学、BLにトンでもと何でもありなごった煮感がとんでもないことになっている。

主人公格である伏木空がSF好きであり、相方ポジションな武人がノンフィクションばかり読んでいるところは作者の得意ジャンルを語らせるためなんだろうけど、それにしても登場する本の幅が広いこと広いこと。

一口にSFといっても本当に色々。
1巻はエドモンド・ハミルトンが中心となり、古典名作の『フェッセンデンの宇宙』やら『キャプテン・フューチャー』シリーズへの深い愛が語られたと思いきや、現代日本最高のSF作家のひとりとして野崎まどの名前まで出るなど年代を問わず作品が紹介されているので巻末の参考資料の数が大変なことになっているし。

実際にビブリオバトルで紹介される本は十数冊程度なんだけれど、それでも、これだけ内容を語れて、かつ、青春小説としてちゃんと物語を成立させているところはすごいよなあ。
(そして、この青春小説風の描き方の参考にした本がファミ通文庫から出版されている『文学少女』シリーズというあたりも、じつに山本弘氏らしい)

何より、作中で紹介する本は実際に作者が楽しんで読んだんだろうと思える紹介の仕方が最高。
自分も読んで面白かった本をブログで紹介するのは大好きだし、人様の「これおもしれー!」という叫びを読むのも好きなので、この本はそれだけで楽しめたな。

紹介された本のうち何冊かは読んだこともあったので、既読者からすると「こう紹介するのか!」という楽しみ方も出来たし。
(ちなみに、個人的オススメは『小学4年生の世界平和』。世界平和ゲームというものに子供たちが挑むノンフィクションです)

しかし、このビブリオバトルの考案者は『ソード・ワールドRPG』をプレイした経験をヒントにしてビブリオバトルを思いつき、山本弘氏が書いたリプレイを参考にして『ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム』を書いたというあたり、奇妙な縁を感じてしまうな。
(まあ、ある程度以上の年齢の人だったらファンタジーブームまっさかりのときにロードスと出会い、そこから派生してTRPGに触れる機会も多かったと思うけどね)

すでにシリーズ2冊目も出ており、そちらももう読み終えたのでさっさと感想を書いちゃいます。

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感想リンク。
『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』
『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』

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