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米澤穂信 全作品レビュー

ミステリ・SF感想
11 /30 2011
米澤穂信『氷菓』がアニメ化するみたいですね。
前々から追いかけてきたシリーズだけに、感慨深いものがあったりなんだり。

せっかくなので、単行本になっている米澤穂信作品レビュー。
同じ作者の作品をとりあつかうので、オススメ度も五段階表記で記しておく。
細かい感想は後日追記予定。

◆『古典部シリーズ』
氷菓 (角川スニーカー文庫)氷菓 (角川スニーカー文庫)
(2001/10)
米澤 穂信

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『氷菓』(感想リンク)☆☆☆☆
デビュー作。すべてはここからはじまった。
200Pあまりと、短いながらも過不足なく整った青春ミステリ。そうそう。こういうのがいいんだよ。
ミステリといえば殺人事件という、探偵漫画に毒された人にこそ読んで欲しい、人が死なないミステリ。
日常に秘められた謎というのは、時として死よりも重く圧し掛かり、冗談半分のように軽く扱われる代物なのだ。
何はなくとも、米澤穂信のデビュー作であり、氏の青春ミステリというのがどういう方向性なのかをよくあらわした一冊。
米澤ワールドの入り口として、是非どうぞ。


愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫)愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫)
(2002/07)
米澤 穂信

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『愚者のエンドロール』(感想リンク)☆☆☆☆
アマチュア映画の結末を創造するという、犯人探しであり、脚本作り。
このような、すでにある事件の結末を考えるというのは『毒入りチョコレート事件』やら『探偵映画』など前例はあるものの、本作ではそれぞれ勝手な方向に進もうとする若者たちを描いているのが見事。思い通りにいかないところが、じつに面白い。
なお、角川スニーカー文庫版のほうはカバー折り返しに結末と関連したちょっとした小技がしかけられているのだが、現在手に入る角川文庫版ではカットされている。残念。


クドリャフカの順番 (角川文庫)クドリャフカの順番 (角川文庫)
(2008/05/24)
米澤 穂信

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『クドリャフカの順番』☆☆☆☆☆
学園祭を舞台にした物語として、およそ最高峰の出来栄えを誇る小説。
一般文芸から、ライトノベル畑まで眺めてみても、ここまでハッピーでバラエティ豊かに学園祭の雰囲気を描ききったものは存在しないだろう。
どこまでも明るい学園祭。苦労が報われた発表の場という、成功の象徴の後ろにある、数々の計略、失敗、挫折。
これら、輝かしい光に隠れてしまう影の部分を描いてくれるのが、米澤穂信の魅力なのだ。
ハッピーだけでは終われない、でも後味さわやかという、作者の力量が遺憾なく発揮された青春群像劇の傑作。


遠まわりする雛 (角川文庫)遠まわりする雛 (角川文庫)
(2010/07/24)
米澤 穂信

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『遠まわりする雛』☆☆☆☆
奉太郎たちの一年生時代を締めくくる連作短編集。
連作の名は伊達ではなく、一年を通して、ヒロインのえるへの想いがどのように変化していったのかを丁寧に描いている。
遅々として進まなかった恋愛劇が、ようやく一歩進んだ記念すべき一冊。というか、一年かけてこれかよ!
オススメは『心あたりのある者は』。これは、かの『九マイルは遠すぎる』へのオマージュ作品。論理のアクロバットを堪能してください。


ふたりの距離の概算ふたりの距離の概算
(2010/06/26)
米澤 穂信

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『ふたりの距離の概算』☆☆
持久走中に過去に起きたある出来事の真相を推理するという、安楽イス探偵の逆を行く(でもやってることは同じ)もの。
謎は小粒であり、新入部員が中心となるお話なので、ミステリ好きとしても『古典部』ファンとしてもやや物足りない内容となっている。
ここで豆ちしき。
雑誌掲載時は――――だんごの値段が120円だった(どうでもいい)
ほかにも、ダーツ→ビリヤードという変更があったりする。



◆『小市民シリーズ』
春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)
(2004/12/18)
米澤 穂信

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『春季限定いちごタルト事件』☆☆☆☆
米澤穂信先生の第二シリーズ。
漫画化もされているので、知名度はそれなりにあると思われる。小市民を目指す高校生男女の物語。
『古典部』よりもキャラクターを尖らせた作品であり、謎から離れようとする少年少女がまるで、いちごの香りに誘われるかのようにふらふらと事件に足を向けていく。
ヒロインの小佐内さんは、まさしく米澤穂信作品の代表的な存在。
好き嫌いが非常に別れるキャラクターだろうが、彼女の存在があるからこそ、この作品と作者が一筋縄ではいかないものだということをわからせてくれる。


夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)
(2006/04/11)
米澤 穂信

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『夏季限定トロピカルパフェ事件』☆☆☆☆
シリーズの第二段。
前作でも使用した、連作短編としての味わいをさらに強めた一作。
『小市民』シリーズで最も謎の要素が強く、作者いわく、
「○○と○○の対決(ネタバレなので伏字)がバトルもののような感覚で若い読者に受けいられたのでしょう」
という、力ではなく頭脳による対決が魅力の作品。
なお、ラストの引きが非常に良いところで終わっているので、読む場合は必ず続きを手元に用意しておくこと。


秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
(2009/02)
米澤 穂信

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『秋季限定栗きんとん事件』☆☆☆
リアルタイムで追いかけていた読者にとっては、『夏季限定』の気になりすぎる引きで三年近くも待たされたといういわく付きの作品。
途中に差し挟まれる謎は、よく読むと青春作品としては機能しているが、ミステリとしては作品から分離してしまっているのがやや残念。
それでも、ラストに待ち受ける小佐内さんの台詞は、この作品が『青春』ミステリなのだとはっきりと教えてくれるだろう。
綺麗な後味なので、続編が待ちきれないという人でも安心してここまで読むことができるので、わりとオススメなシリーズ。



◆その他
さよなら妖精 (創元推理文庫)さよなら妖精 (創元推理文庫)
(2006/06/10)
米澤 穂信

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『さよなら妖精』☆☆☆☆☆
おそらくは、米澤穂信先生の名前を広めるのに最も貢献した作品。
『古典部』シリーズで使おうとしたネタだったというだけに、内容は身を切るほど苦く、切ない。
青春のほろ苦さなんてとてもいえないほど、鮮烈に過ぎ去ってしまった妖精の残光。
デビュー作からして、米澤穂信氏は過ぎ去った場所に残された人たちのお話を描いているのだが、本書はそれをさらに一歩進めている。遭遇していたのに、するりと手の平から希望が逃げていく。そんな絶望がここにはある。
それはまるで、いくら捕まえようとしても手の届かない妖精のような、どこにでもありそうな出会いと別れの物語。


犬はどこだ (創元推理文庫)犬はどこだ (創元推理文庫)
(2008/02)
米澤 穂信

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『犬はどこだ』☆☆☆☆
米澤穂信が挑戦した、どこか軽いハードボイルド。でも、事件は重め。
ハーフボイルドという言葉を使ったのは『仮面ライダーW』であるが、本作の探偵もとてもハードとはいえない小市民。なにせ、専門が犬探しなのだから。
そんなハーフボイルドな主人公が、失踪事件というハードな謎に遭遇してしまうから、さあ大変。
本来なら、異能である探偵が最も平穏を愛するという、まるで探偵だけが切り絵のように事件から浮いた存在になっているのがとても面白い。
最後まで読むと、そっけないタイトルに深い意味があったことを気付かせてくれる。ああ、犬はどこだ。


ボトルネック (新潮文庫)ボトルネック (新潮文庫)
(2009/09/29)
米澤 穂信

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『ボトルネック』☆☆☆☆
十代のうちに読んだほうが良い、現代版『人間失格』いや、『素晴らしき哉、人生!』か?
自分は果たして、世間の役にたっているのだろうか? 
そんな悩める少年の背中を(どこかへ)後押ししてくれる名作。
さあ、『氷菓』で米澤穂信を知った中高生よ、この作品を読むのだ。


インシテミル (文春文庫)インシテミル (文春文庫)
(2010/06/10)
米澤 穂信

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『インシテミル』☆☆☆
米澤先生による、謎のための謎に特化した作品。映画化? そんな昔のことは忘れたな。
ミステリファンのミステリファンにより、ミステリに対する愛と自嘲が入り混じった展開には、苦笑を浮かべながら読んでもらいたい。
これを読む前に、古典ミステリやクローズドサークルやゼロサムゲームを取り扱った作品をいくつか読んでおくと、本書の魅力がさらに増すのだろうが、無理はいいません。ここから読み始めても楽しいはずです。
正直なところ、ミステリ知識がいっさいない人がこの作品を読んでどう評価するのかがちっともわからないので、どう紹介していいのやら。
メイントリックを驚いて楽しめるか、だから何よで終わってしまうかで、その人のミステリ観がわかるような、ミステリを偏愛する人には、間違いなくオススメできる一冊。
ミステリに興味のある方は是非。


儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)
(2011/06/26)
米澤 穂信

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『儚い羊たちの祝宴』☆☆☆☆
最後の一撃ばかりを集めた、バラエティ豊かな奇妙な短編集。
最近はめっきり見かけなくなった、ファンタジー要素のない世界で起きるありそうでない、でも、あってもおかしくないという、タイトロープのようなバランス感覚で歩む作品。
はじめから、最後の一撃に重きを置いているとばらしているので、すれっからしの読者にはある程度結末が読めてしまうのが難点といえば難点。
事実、読んでいて何本かは結末が先読みできてしまったのだが、そこは米澤穂信。謎が自明でも、読ませる小説を見事に作り出していた。
オススメは『山荘秘聞』。メイドとは、お客様をもてなすものなのですよ。


追想五断章追想五断章
(2009/08/26)
米澤 穂信

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『追想五断章』☆☆☆
リドルストーリーを題材にした、いぶし銀な長編。
作品の時代背景がバブルがはじけた後ということもあり、どこまでも薄暗い。
内容は、詳しく語るとすべてがネタバレしそうなので紹介しづらい。そして、なによりも非常に地味。
米澤穂信らしく、過去に起きた事件を調べなおして新しい真実を探り出す物語なのだが……。
これ以上はネタバレになるので、やはり語れない。
ミステリ的な仕掛けとしては、米澤穂信作品でもベスト3に入るだろう出来栄えなので、謎を中心に読みたい人にはオススメ。


折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
(2010/11/27)
米澤 穂信

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『折れた竜骨』☆☆☆☆☆
第64回 推理作家協会賞 長編及び連作短編集部門受賞作。
受賞作の名に恥じぬ、ファンタジーと本格ミステリが融合した名作。
本格ミステリと物語を結びつけるのが非常に難しいものだというのは、ある程度ミステリを読んだ人なら同意してくれるだろう。
それは、同作者の『インシテミル』を見てもわかるように、謎に比率を置くと物語が弱くなる。
かといって、物語に比率置こうとすると謎が日ミスのような軽いものや、『儚い羊たちの祝宴』のような最後の一撃重視になってしまう
本書は、まさにお話と謎が絶妙のバランスで保たれている。
世間でよくある、丁寧に作られた物語にポンと叙述トリックを混ぜたようなものではなく、作品のそこかしこに伏線をばら撒いておき、解決編で回収するという、いまどきめったに見れないほどストレートな謎解き。
フーダニットにおける消去法推理の美しさを再確認してくれる、若い人にこそ読んでほしい名作。


――――
あとは雑誌掲載時に乗っていたのが何本かあるが本棚から引っ張り出すのが面倒なので、思い出せるのだけ記しておきます。
『ペルーフ』シリーズも大体手元にあったと思うけど、頭の中でごっちゃになっているので割愛。

◆雑誌掲載
『川越にやってください』
小説というよりも、小噺? 雑誌で2Pくらいの短さだった気がする。 
米澤先生がよくツイッターやブログで書く、大真面目にふざけている話を広げたようなもの。
たしか、
「夢の中で私は逮捕されました。しかし、それは無実の罪だったのです」
という感じで、主人公の語りが続いていく。
米澤穂信ファンならば、それなりの数の人は「おや?」と思う展開がオチに繋がっている。


『Do you love me?』
ホワイダニット中心の作品。
恋人に殺された男が、幽霊の見える主人公に「なぜ、彼女に殺されたのか?」を訊ねる。
じつはこれに出てきた人らしき人物は、こっそり『ボトルネック』にも出ています。


『軽い雨』
過疎地となった村で新しい入居者を募り、その苦情に奔走する役人たちの話。
ラジコンが趣味だったり、庭でバーベキューをするなど、近隣住民の迷惑を考えない人たちによる苦情から起きるハウダニットとホワイダニットが合わさった、なかなかに面白い作品。
設定的にシリーズものにできそうなのだが、どうなるんでしょう?


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