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『ラジオガール・ウィズ・ジャミング』感想。+『展開』と『構成』の面白さについて。

ラノベ感想
11 /29 2012
ラジオガール・ウィズ・ジャミング (電撃文庫 (1288))ラジオガール・ウィズ・ジャミング (電撃文庫 (1288))
(2006/07)
深山 森

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第12回電撃小説大賞の最終選考落選作品。
出版されたのは2006年なのだが、それを差し引いてもオススメしたい作品です。
電撃小説大賞といえば、拾い上げ作品にかなりの力作が揃っているというのは、わりとお馴染みだろう(たしか、『キノの旅』や『とある魔術の禁書目録』は拾い上げだったと思う。『月光』も面白かったよなあ)

この作品も、その例に漏れずかなり面白い。何より、自分の好みにとてもあっていた。
背景となる設定を必要最小限にしか説明せず、登場人物もあまり掘り下げない。いくつもの伏線が重なり合い、収束していって、ラストできっちりひとつの綺麗な形になるという、プロット重視の作品です。

お話の舞台は、どこかの世界のどこかの国。といっても、ファンタジーではない。
そこでは、ロケットを作れるくらいには文明は発達しているものの、まだ携帯電話もインターネットも存在していないような、ちょっとだけこの世界とは違う場所。
そんな、とある世界のとある街を舞台にして、主人公・軍隊・テロリストと三つの陣営の思惑が交錯する話なんだけど、群像劇というわけでもない。
語られる中心はあくまでも主人公たちであり、ラジオであり、この街だ。
雰囲気重視ではなく、主人公たちが活躍するアクション部分や盛り上がりなどはちゃんと用意されている。
それでいて、テーマを押し出しすぎないようにしつつ、三つの陣営の話をバランスよく描いたのはお見事。

ちょっとだけ違う世界での、戦後の歴史とたしかな日常を描いてくれるという部分に留まらず、ちゃんと伏線を張り、主人公と敵役に確執を生み、同情させないほどに敵の背景を描いた丁寧な作品。
そして何より、題材にしているラジオという媒体を生かしたラストのカタルシスはお見事。最初に読んだときはその言葉が来ると思わず、前後の展開とあわせて思わずウルッと来てしまった。
新聞やテレビなどの情報が規制された街であり、ラジオから流れる放送があれなんだから、予想できそうなものなのだが、うっかりと不意を突かれてしまったよ。
読みおえると、あの場面にはあの台詞しかないだろうと思えたので、納得のオチといったところでしょう。

この作品のように、構成が丁寧な作品って好みなんだけど、ライトノベル全体でみると数が少ないように思えるんだよね。
好きな作風なんだから上手く感想を書きたいのだけれど、これが悩ましい。ぶっちゃけ、「読んでみろ!」としか紹介のしようがない。
「面白かったです。まる」じゃあ味気ないのだが、「こことここが伏線ですよね!」や「このときに登場した○○がここで有効的に活用されて~」なんて分析するのも野暮というもの。
けど、いざ説明しようとするとどうしてもあらすじやら、伏線をひとつひとつ列挙しなければならない。……うーん。

面白いんだから面白い。これだけの言葉でしか紹介できないのは、ちょっと悔しいな。
この作品もまた、そんな風に構成が上手い作品なんだよね。
展開も面白いのだが、それよりなにより構成が好みだった。

『展開』の上手い作品と『構成』が上手い作品について、少しだけ説明してみよう。
小説とは、表現方法が乏しい媒体だと思っている。
映画だと「演技が好き」「役者が好き」「音楽が好き」などという見方が出来るし、漫画やアニメなら「絵が好き」だけでも、十分に楽しめる要素となっている。
これが小説だと、イラストは数枚、あとは文章だけですべてを表現しなくてはならない。
文体が特徴的な作家さんもいるけど、それは少数派だろう。そのため、ほとんどの小説の面白さというのは、『展開』か『構成』のどちらかを意味している。

『展開』が面白いというのは、わかりやすいだろう。漫画でいえば『キン肉マン』みたいに、細かいところは無視して、盛り上げる部分を大いに盛り上げる作品のことだ。全体的に見れば破綻もいいところなんだけど、それを補って余りある面白さがある。
これがアクション映画だとさらにわかりやすく、ドッカンドッカンCGが使われて、主人公が暴れているだけでもなんか面白い。
ライトノベルにしても、バトルアクションものではこういった『展開』重視の作品が作品が数多く存在している。読み終わったあとにただ、面白かったという満足感が得られる作品のことだ。
読んでいるだけで楽しいし、また読み終わったあともツッコミどころについて話すことができる。それもまた、魅力のひとつなのだろう。
なにはなくとも面白いというのが、『展開』を重視した作品の特徴だ。

一方の『構成』の面白い作品についてだが、これはやや説明しづらい。
「伏線が上手い作品」と言い切ってもいいのだが、盛り上げるべき箇所で盛り上げるだけで、伏線が少ない(それでなお面白い)作品も多いからだ。

個人的には、この『構成が上手い』というのは『前振りと下準備が丁寧な作品』ということになる。
たとえば、本書『ラジオガール~』だと、タイトルからしてラジオがキーワードになっていて、冒頭にもラジオが登場している。
主人公もラジオと関わっている人間なのだから、結末でそれが重要なものになるのはだれにだって予想ができることだ。
これは伏線というほど隠してあるものではないが、前振りと下準備としては上手く出来ている。

先ほど『展開』が面白いといった『キン肉マン』を引き合いに出してみよう。
そちらでは、いきなり新しい設定を出すなどして、読者を驚かせていく。これには伏線などが用意されていないが、『展開』としては非常に面白いものだ。ただ、全体を貫くような上手い『構成』ではない。

ライトノベルでも、具体的な作品名をあげて例に出せば『とある魔術の禁書目録』や『SAO』などのバトル系の作品は『構成(前振りと下準備)』よりも『展開』が重視されている。
敵の正体や勝ち方などの伏線はちゃんと張られているものの、作品全体を貫き通すような下準備には欠けている。
盛り上げるべきクライマックスではちゃんと盛り上げてくれるのだから、構成は悪くはない。ただ、前述したような一貫したキーワードや、前振り・下準備に欠けるだけだ。

『展開』重視の作品をバカにしているわけではない。どちらも面白い作品である。これはもう、好みの問題だろう。
ただ、小説に限らず、『展開』と『構成』の上手い作品のうち、どうしても『展開』が面白い作品のほうが感想を書きやすい。
前述したように、『構成』の上手さを説明しようとすると、どうしてもあらすじなどを書いていかなければならなくなるからだ。
これがミステリとなると、さらに悩ましい。
上手い伏線をたったひとつだけ取り上げても、それはたんなるネタバレでしかないうえに、面白さの本質が伝わらないように感じてしまう。そのため、感想を書くのがとても難しいのだ。
(当ブログでミステリの感想がいっこうに増えない理由の一端が、じつはこれだったりする。書きたいとは思うんだけどなあ)

まあ、一読者としては面白ければわりと何でもいいんだけど。
どちらにせよ、面白い作品の面白い部分。それを、これからも紹介していきたいところですね。
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