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北山 猛邦『少年検閲官』感想。

ミステリ・SF感想
06 /28 2013
少年検閲官 (ミステリ・フロンティア)少年検閲官 (ミステリ・フロンティア)
(2007/01/30)
北山 猛邦

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久しぶりに、『少年検閲官』読みました。
北山猛邦作品では、これが一番好きかな。

焚書によって本がほとんど存在しない世界という、ディストピアが舞台のミステリ。

面白いなあ。
作者の独特な雰囲気がじつに上手く生かされている。

北山猛邦作品といえば、現実感のない童話めいた世界なのに、ふとしたところで現実に繋がっているという、童話の中の現実、現実の裏にある童話といった、現実と虚構が入り混じった不思議な雰囲気が特徴となっている。

この作品も、主人公のクリスと探偵役のエノが十代半ばの少年ということや、表紙の雰囲気から童話や児童文学のような印象を受けるが、中身はしごく骨太なSFミステリ。

焚書によって、教育やニュース、娯楽のすべてをラジオに頼るようになった世界。
そのすべてが国に管理されているために、配信される情報がどこまで正しいのかもあやふやになってくる。

その閉鎖的な世界を表すように、冒頭からある人物によって、
「世界は、壁に包まれた箱庭なんだ」
といった、『壁に囲まれた森』の実在を匂わせる体験談が語られる。

こんな、現実感のない主張に驚いているのも束の間、さらにはその森に近づくと『探偵』に殺されるといった、こちらの世界の人間からすればまったく意味のわからない言い伝えが登場し、実際に殺人事件まで起きてしまうという始末だ。

この雰囲気だけでも特筆すべきものなのだが、このお話のスゴイところは殺人事件が起きたあとに待っている。
たとえ、首を切断されて殺された人がいても、ここでは
「なんらかの事故で死んだ」「そういう死が訪れた」
として、ごくごく自然に処理されてしまう。

本がなく、ラジオやテレビまで国によって情報が統制されている世界なので、住んでいる人たちはだれも殺人というものを知らないからだ。
この世界では『殺人』や『探偵』すら、童話の中の妖精や魔法のようにあやふやなものでしかない。

さすがに、そこまで上手くは管理できないだろうとは思いつつも、作者が描く童話のような幻想的でいて残酷さが漂う文章から、思わず納得してしまうというもの。

この、殺人と探偵、そしてミステリすら存在しない世界で起きる、連続首切り殺人事件。
もう、この時点でミステリ好きとしてはワクワクせずにはいられないのだが、そこからいたる結末があまりにも素晴らしい。

ネタバレのためにここでは語れないが、たったひとつの事情からすべての謎が解決するという、ミステリとしての意外な盲点。
そして、こことはちがうS・F(すこし・ふしぎ)な世界での暗い生活という、ディストピアものとしての側面。
どちらも、衝撃を受けずにはいられない結末でしょう。

ミステリとして、またSFとしても非常に優れた作品。
オススメです。

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『感想リンク』
北山猛邦:『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』
北山猛邦:『人外境ロマンス』
北山猛邦:『ダンガンロンパ霧切』
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