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河野裕『つれづれ、北野坂探偵舎』感想。

ミステリ・SF感想
10 /30 2013
つれづれ、北野坂探偵舎    心理描写が足りてない (角川文庫)つれづれ、北野坂探偵舎 心理描写が足りてない (角川文庫)
(2013/09/25)
河野 裕

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河野裕『つれづれ、北野坂探偵舎』読了。
ライトノベル読みには、『サクラダリセット』の人といえばわかりやすいかも。

なかなかに上手い特殊設定ミステリ。
本格ミステリではないが、ちゃんとミステリミステリしていた。

これ、けっこうすごいな。現代を舞台にして特殊設定を組み込んでいるのに、ちゃんとミステリとお話が両立しているんだもの。


本格ミステリってのは、この場合は謎を中心にしたオーソドックスなミステリのことです。
どこかで殺人事件が起きて、それを探偵が推理する。推理に必要なヒントはちゃんと読者に提示されており、純粋なパズラーとして楽しめるというスタイルの作品のこと。

本格ミステリ好きによる愚痴なのですが、ライトなミステリ(ライトノベルという意味ではない)はとてもつまらなくなりやすいと思っています。
謎と物語を両立させなければならないので、全体のバランスが崩れやすいからです。

登場人物の物語(便宜上、ドラマ部分と呼びます)に重点を置くと事件や謎にページを割くことが出来なくなり、結果的にミステリ部分の密度が薄くなるからでしょう。
謎の魅力に特化した本格ミステリと違い、ドラマ部分を重視するミステリだと、謎が解かれる楽しみをドラマがジャマをするということですね。

ミステリをある程度読んだ人なら、けっこうそういった作品にも触れているはず。
テキトーに叙述トリックをポンと仕込んで、見せたかったのはドラマ部分のほうですよって感じの作品のことです。

そういった作品も悪くはないんだけど、個人的にはやはり、謎が中心となった本格ミステリを、さらにいえば謎とドラマが両立したミステリを読んでみたいというのが正直な気持ちです。


で、この『つれづれ、~』なんですが、そこらへんの謎とドラマ部分を上手く絡めていて、ちゃんとミステリと物語を両立していたと思う。

主人公には幽霊が見えるという特殊設定があり、幽霊や生きている人たちの悩みを解決していくという感じで話は進んでいく。
ドラマが中心になりそうな設定なのに、『証言者が勘違いしている』『証言者が嘘をついている』『聞き手が勘違いしている』など、ちゃんと物語の中にいくつもの謎を盛り込んでいた。

この『幽霊』という特殊な設定が、ちゃんとミステリに絡んでいるのは上手いよなあ。
詳しく書くとネタばれになるので書けないけど、主人公にしか見えないという設定やら、幽霊がこの世にとどまっている理由など、さまざまなアプローチで謎を作り出しているんだから。

下手な作家が書くと、ドラマがミステリの足を引っ張り、ミステリがドラマの足を引っ張って共倒れになることが多いだけに、このバランス感覚は貴重だなあ。


本格ミステリと違って、謎の中心がどこにあるのかわかりづらいというとっつきづらさはあるものの、じっくり読めばその面白さがよくわかるはずです。
『サクラダリセット』のときからだけど、この作者は構成が上手いんだろうね。作中で出した設定はすべて、解決場面での盛り上げのために用意されているように思える。

文章も『サクラダリセット』のときと同じように、よく言えば癖がなく読みやすい、悪く言えば淡白で味気ないものだけど、個人的には『つれづれ、~』のほうが読みやすくなっていたかな。

わりと面白かったので、続きがあればとりあえず購入すると思います。

fujimiti