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『王手桂香取り!』感想。「奇をてらわない、ストレートな将棋小説」

ラノベ感想
02 /26 2014
王手桂香取り!  (電撃文庫)王手桂香取り! (電撃文庫)
(2014/02/08)
青葉優一

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第20回電撃小説大賞銀賞受賞作、『王手桂香取り!』

将棋+部活青春もの。
そのふたつからイメージされる展開そのままに進み、綺麗に終わってくれた作品。
将棋なんて何年もまともに指していないし、そもそも腕自体がへっぽこな自分だけど、普通に楽しめた。

あとがきで作者が、
「将棋を題材にした小説はぱっと思いつかない」
とか書いていたけど、なるほど確かに。

自分もそれほど小説を読んでいるわけではないけど、将棋を題材にした作品は少ないと思う。
すぐに思い出せたのだと、『盤上の夜』(宮内祐介著)に掲載されている『千年の虚空』や、『狐火の家』(貴志祐介著)の『盤端の迷宮』あたり。どちらも一般レーベルの短編な上、将棋が題材に使われているだけでメインではない作品だけどね。
これがもし長編に限定して、さらには、ライトノベルでとなると何ひとつ思いつかなかった。

というわけで、珍しさではピカイチの本作。
内容のほうだけど、これがまあ銀賞受賞が納得の完成度。
なんとなく、銀賞受賞作は文章が丁寧で目新しい題材を直球で描いてくれるような作品が多い気がするけど、これもそれ。地味な佳作~良作といったやつだった。

駒の化身が現れて、主人公の将棋の腕を磨いていく。
設定だけ聞くと誰もが『ヒカルの碁』を思い出しそうだけど、味わいはだいぶ違うね。

主人公は最初から将棋を指しており、それなりの実力がある。
駒たちの手助けを借りるのはマナーの悪い子供や同じようなプロだけにして、あとは指導役に留まっている。

この駒の化身たちの出番が少なく、主人公とライバルとの戦いやトーナメントが中心になっているので、競技ものや部活ものといった印象のほうが強かったかな。
ライトノベルなのにと言っては失礼だけど、駒の化身の三人のお姉さんたちとのエロハプニングもラブコメもなく、純粋に将棋の話を中心にして進んでいくという健全な内容だったし。

ぶっちゃけると、内容は部活ものやトーナメントもののテンプレの粋を出ていないのは確かなんだけど、十分に面白かった。
文章は読みやすい感じの一人称だし、主人公、ヒロイン、ライバルにいたってもいい奴だらけなので読んでいて不快になる場面もほとんどない。

最後の最後で、主人公が特訓した戦法でライバルに挑む方法があまり綺麗なものじゃなかったけど、あれ以上うまく話を進めるのも難しそうなのでしかたないといえばしかたないか。

あとは、せっかく将棋を題材にしているんだから対局中の棋譜を挿入して欲しかったかというのはあるかな。
個人的には、キャラクターのイラストを少なくしてでもそういった図を挿入したほうが俄然わかりやすくなると思うし。

もっとも、挿入しようとすると対局をちゃんと最初から最後まで考えないといけなくなるので、作者の労力が増えそうだけど。
(そういえば、『ヒカルの語』も棋譜どころか盤面すらまーったく描かれなかったなあと思い出す)

とくに目新しい展開も、印象に残る登場人物も、とびきりの面白さというものもなかったけど、丁寧な作風だし将棋も好きなので、続きは買うと思います。

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感想リンク。
『王手桂香取り!』2巻
『王手桂香取り!』3巻
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