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ラノベ感想:『ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件』「魔女狩りを題材にしたファンタジーミステリ。フェアプレイに徹した姿勢は高く評価したい」

ラノベ感想
09 /28 2016


ダッシュエックス文庫、紙城境介著『ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件』

ライトノベルレーベルでは珍しいミステリ重視な作品。
作者がライトノベルミステリ大好きということもあってか、かなり興味深く読めた。

魔法のある世界で起きた殺人事件という、特殊設定ミステリ全開なシチュエーションが本書の最大の売り。
魔法のある世界でのミステリといえば、一般レーベルでは『魔術師を探せ!』のダーシー卿シリーズや『殺竜事件』の戦地調停士シリーズなどがあり、ライトノベルレーベルでも『六花の勇者』や『トリックスターズ』シリーズなど数多く存在している。

作者もこの手の作品に精通しているようで、あとがきなどで上記の作品の一部や『折れた竜骨』『うみねこのなく頃に』などの名前を挙げている。
それほどまでに前例がある趣向のミステリなのだが、この作品はかなりフェアプレイに徹しているところが個人的にはかなり高く評価できた。

特殊設定ミステリ、それも魔法が存在する世界のミステリだと、どうしても犯人は何らかの魔法を使ったという結論になってしまう。
これは読者にとっては推理不可能な何でもありな世界になりやすく、それによって謎解きの楽しみが奪われてしまいやすい。

作者もそのことを弁えているのか、この作品ではあらかじめ世界に存在する十一種類の魔法を列挙しておき、最初から
「これらの魔法の中で、どれを使えば犯行が可能か?」
と可能性を制限していた。この試みは素直に賞賛して良いだろう。

他の特殊設定ミステリでも似たような試みを行ったものはいくつか存在するが、
(例:『ダンガンロンパ』は現場に残された証拠と登場人物の技能を組み合わせて犯人を探すものだった)
これだけ魔法の性質と犯行の行いやすさが同居している例は珍しい。

なにせ作中に出てくる魔法が「変化」「無から火を生み出す」「触れただけで殺すことが出来る」など、ミステリ的に考えればトリックを組み立てやすいものが勢ぞろいしているのだから。

その上、作中で焼死体が出てきて顔の識別が不可能な状況が用意されれば誰だってバールストン先行法を疑うので、読者も素直に
「どの魔法によって事件が起きたのか?」
に思考を固定させることが出来る。

とまあこのように、この作品の謎に対する心構えだけ見れば特殊設定ミステリとしてはほぼ完璧と言っても良いのだが、終盤の謎解きが……ね。

これはもう完全に作者と自分のミステリ観の違いで片付けられる問題なので文句はない。
驚きはあった。突拍子のなさも高くは評価している。ただ、好みではないだけ。
(面白いと愛しているは別ものなんだよ)

むしろ、これだけぶっ飛んだ謎を出せるのもミステリの懐の深さというものなので、ミステリ好きとしては、
「ライトノベルでもこんだけぶっ飛んだことをやってくれる益荒男が存在していたとは!」
と嬉しくなったものだ。

『コズミック』(清涼院流水著)のような突拍子もなさすぎてポカーンとなるミステリが好きな方ならある程度楽しめるとは思う。
ミステリは広大だ。


以下、ネタバレ込みの感想なの折りたたむ。

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