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ラノベ感想:『弱キャラ友崎くん Lv.1』「第10回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作品。ひねくれぼっち少年と努力リア充少女による、システマチックなリア充へのなりかた講座。」

ラノベ感想
06 /18 2016


ガガガ文庫、屋久ユウキ著『弱キャラ友崎くん LV1』読了。
第10回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作品。

さっすがガガガ文庫の新人賞受賞作品。
レーベルの特色である、ひねくれぼっちによる青春物語がこれでもかと炸裂している。

ガガガ文庫といえば、渡航(『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』)や江波光則(『鳥葬』シリーズなど)」と、ヒエラルキーの底辺からの人間観察が秀逸な作品を数多く発表してきたものだが、この作品もまた同じ。

対戦格闘ゲーム『アタファミ』(『スマブラ』みたいなもの)のオンラインチャンピオンである友崎は、ランク第二位であるクラスメイトの日南葵とオフで出会い人生はクソゲーだと公言したところ、人生は『アタファミ』と同じくらいの神ゲーだと信じている彼女からリア充のなり方を伝授される。

この「リア充のなりかた」が見事。
下手な精神論ではなく、すべてをシステマチックに紹介していく。

「ハゲでサングラスをつけて服装も同じな人間がふたりいても、パッと見でリア充かどうかは判断できる」

ダサい、暗いとされる人間は性格の問題ではなく、身振りひとつで印象は大きく変わるものと日南は解き、その差は表情筋と姿勢にあるとして友崎に姿勢と表情の矯正から入るなど、努力型ヒロインらしい堅実な方法でリア充へのなりかたが伝授される。

そこから始まる「リア充への第一歩」はわりとよく見かけるテーマであるものの、主人公の人間観察描写がとても心地よい。

「リア充グループの会話には役割分担があり、最初に話題を出す人物は限られている」

と、いわゆるリア充とキョロ充の違いを分析したりと、物事すべてを理解から始めようとする姿勢はとても好みに合っていた。

こうやって主人公をリア充に近づけていくならば当然ながら終盤ではリア充軍団との衝突が用意されているんだけど、この対決シーンがねえ。

この作品に限らず、言ってしまえばガガガ文庫の特徴のひとつだと思うんだけど、主人公がリア充をやりこめたのに勝利の快感がちっともないんだよね。

第三者視点に立ち、論理的に考えれば主人公の意見が正しい。
いや、作中人物からしても主人公の方が正しいと感じているだろうし、頭では間違いなく理解しているはずである。
それなのに、主人公は敗者となり周囲から嫌われていく。

前々からこのあたりのことがけっこう疑問点だったんだけど、今回この本を読んである程度氷解した。

178Pから引用

「あのね。『空気』っていうのは『その場における善悪の基準』のことよ」


と日南が言うように、主人公がのけ者にされるのは空気をまったく読んでいないからなんだよな。
空気を読まない行動を取ったからこそ、正論だろうが何だろうが『悪』となる。
それが学校という世界であり、十代の少年少女の精神構造である。

そういった歪な世界をどのようにして生きていくのかを描いているのがガガガ文庫の底辺青春小説なんだと思う。
このあたりの、1%の楽しさと99%の息苦しさを楽しめるからこそガガガ文庫作品は好きなんだろうな。

1巻から登場人物が多めであり、まだ消化不十分な部分がいくつかあるので続刊はありそう。
なので、続きも楽しみにしています。
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fujimiti