雑記:「雑な若者の活字離れとラノベの流行の話が目に入ったのでちょっと突っ込んでみる」

2017年5月23日にツイッターに投稿した文章をまとめ・追記したものです。

ことの発端は以下の文章を目にしたことから。

>人類史において「若者向けの書き下ろし小説」が毎月100冊以上も出版される状況が10年以上も続いている日本において「若者の活字離れ」が憂えられるという倒錯。
>その中から異世界転生を除くとほとんど小説が残らない状況が10年以上も続いているから「若者の活字離れ」が憂えられてるんじゃね?

さて、どこから突っ込むか。
そもそも活字離れとは何かにまで言及したいが、今回はそこまでは触れない。
一番気になった部分として、このB氏の文章からは「異世界転生以外の小説が若者には売れていない」と読めるのでそこに反論する。

まず前程として、「ラノベも小説とみなす」とします。いや、ここからはじめないと文句言う人いるし。
次に若者が読んでいるかどうかという答えを出すために「ブームになったラノベは何か」に移る。
単に売れてるだけでは読者層はわからないものの、それ以外の有用なデータが思いつかないので妥協する。

出来ればラノベ以外にもミステリなどの売り上げについても語りたいのだが
(東野圭吾とか西尾維新とか高校生もめっちゃくちゃ読んでるよ?)
そこまで話を広げると収拾がつかないので今回はラノベだけに限定する。

ちなみに若者についてですけど、2010年の10代~20代の男女の総人口は2641万人だそうですので、それも念頭に置いておいてください。(15歳~29歳に限定すると2047万人)
30代のほうが20代よりも人口が多く、これより年下になるとどんどん人口が減っていることも記憶に留めておいてください。

まずは平均値ではなく最高値から。
今現在、最も売れてるライトノベルは間違いなく『ソードアート・オンライン』(以下SAO)である。

『SAO』は2009年の出版以来ずっと売れ続けており、総部数も2000万部オーバーと下手な大ヒット漫画よりもよほど売れている。
この最も売れている『SAO』は異世界転生ものではない。MMORPG内に入るSF、もしくはファンタジーよりのアクションである。
若者の読書離れを語るときに、この作品に言及しないのは片手落ちだろう。

次に誤解を解こう。
この方が何をどう勘違いしているのかはわからないが、十年前、00年代半ばのライトノベル界隈は今ほど異世界転生ブームではなかった。

当時のアニメ、ラノベ界隈を覚えている人ならばすぐに浮かぶだろうけど、00年代といえば初頭に『マリア様がみてる』(98年。アニメ放送04年)のブームがあり、そこから『涼宮ハルヒの憂鬱』(03年)の出版、そしてアニメ(06年)の大ヒットにより学園ものブームが確固たるものとなった。

より詳しく書くならば、00年代初頭はラノベ界隈では『フルメタル・パニック』『ブギーポップは笑わない』なども人気であり、同人界隈では『シスプリ』『マリみて』『月姫』『ひぐらし』、エロゲ界隈にはニトロプラスの『ファントム』『デモンベイン』などライトノベルの文脈で語ってよい作品が多く登場している。

この時代のラノベの文脈や立ち位置はギャルゲ・エロゲ界隈と深い関係があるのでそこまで書かねば片手落ちなのだが、今回は省く。
(例:『シスタープリンセス』は当時の雑誌『電撃hp』にも広告が載っていたので、電撃文庫からギャルゲ界隈に足を踏み入れる読者も一定数いたことが想像できる)

そこから学園もの作品は増え、部活もの、ラブコメものといった特殊能力のないものと、いわゆる学園異能と呼ばれるアクションや伝奇よりの作品が多く生み出された。セカイ系もこの時代なのだが、今回は省く。

日常ものやラブコメものはアニメ化された作品だけに限定しても、

『とらドラ!』(06年・380万部以上)
『僕は友達が少ない』(09年・622万部以上)
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』(09年・500万部以上)
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(11年・500万部以上)

などの作品があり、S・F(すこし・ふしぎ)設定設定を用いた学園ラブコメな『バカとテストと召喚獣』(07年)、『変態王子と笑わない猫。』(10年)などもある。

これらと前後・並行して『灼眼のシャナ』(02年)、『とある魔術の禁書目録』(04年)などを代表とするアクションバトルもブームとなり、ライトノベルという名は世間に浸透していった。

なお、同じく00年代の漫画の売り上げを調べてみたところ『ONEPIECE』『鋼の錬金術師』『おおきく振りかぶって』など桁が違うものがバンバン出てきたが、小説方面でも『ハリー・ポッター』『バトル・ロワイアル』『世界の中心で、愛をさけぶ』『いま、会いにゆきます』など桁が違うものが多く出てきたことを付記しておく。

00年代は『バトル・ロワイアル』や『リアル鬼ごっこ』といったデスゲームものが流行っており、これは普段小説を読まない十代の間でもブームとなった。似たような雰囲気の作品として、漫画でも『DEATH NOTE』があったことも記しておく。
(若者の間でブームになった証拠のひとつとして、当時は『バトル・ロワイアル』を元ネタにした二次小説が大量にあったのだが、執筆者の傷をえぐりそうなので深くは触れない)

参考までに最新のライトノベルの売れ行きランキングも乗っけておきます。
(※ TSUTAYAの週間ランキング5月15日~5月21日分から転載)

 1位:『ゴブリンスレイヤー』5巻
 2位:『新約 とある魔術の禁書目録』18巻
 3位:『妹さえいればいい。』7巻
 4位:『この素晴らしい世界に祝福を!』11巻
 5位:『はたらく魔王さま!』17巻
 6位:『Only Sense Online』12巻
 7位:『天地無用!GX』15巻
 8位:『狼と香辛料 Spring Log2』
 9位:『絶対ナル孤独者』4巻
10位:『織田信奈の野望<全国版> 』18巻

異世界転生ものは4位の『このすば』だけ。
これより下のランキングではアニメ放送中の『エロマンガ先生』『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』が並ぶことからもわかるように、異世界転生だから売れているというよりも知名度(続編、作者、ネット人気など)のある本が売れているというのが現状のようです。

以上の数字から結論をまとめる。

1:「読む人はちゃんと本を読んでいる」
2:「ただし、読む人と読まない人で二極化している可能性が高い」
3:「ライトノベルが十年以上前から異世界転生ブームというのは大間違い」(重要)


『追記』
ブログ版の追記。

売り上げデータを見るに、たしかに売れている新人の作品は異世界転生ものが多いことがわかる。
(調べ中。後に数字も記載する予定)

しかしこれは、文中に書いたように「異世界転生だから売れる」というよりも「すでにネットで知名度を上げた作品(の一部)が売れている」というのが実情のようです。

異世界転生ものだろうがなろう産だろうが売れていないものは売れていないし、売れているものは売れている。
これが一般文芸書ではどうなっているのか、漫画ではどうなっているのかは現在調査中です。
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