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雑記:「異世界ものとサブジャンルについて。『ソードアート・オンライン』を例に」

雑記
01 /09 2018


数日前の続き。(前回の雑記「異世界ものとサブジャンルについて」へのリンク)
前回のエントリーを読んでいない人のためにさっとまとめておく。

・異世界ものにはメインジャンルとサブジャンルがある。
・メインジャンルとサブジャンルは明確に区別しなければならない。

くらいのことを書きました。
では本編いってみよう。



昨今は異世界ものが流行りではあるが、これはサブジャンルも含めて語られていることが多いように自分は感じている。
とくに『ソードアート・オンライン』(以下SAO)は異世界ものの範疇に含めるかどうかはかなり悩ましい問題だろう。

『SAO』を知らない人のためにざっと紹介すると、このライトノベルはVRMMORPGが重要な設定になっている。
ゲーム機を使っているので異世界へ行く方法はSFなのだが、「剣と魔法の世界」という部分を考えればファンタジーとなる。
そのため、以前からSFなのかファンタジーなのかと議論の対象となっていた。

この『SAO』を例にして異世界ものの人気を語る向きもあるのだが、自分はそれに否定的である。
というのも、『SAO』の異世界要素(VRMMORPG内での冒険)はサブジャンルであり、さらに言えば序盤ではその異世界(ゲーム内世界)要素はあまり生かされていないからだ。

『SAO』のあらすじを説明しよう。
ちなみに、そこまでネタバレはしないつもりなので未読の方もご安心を。

第1部(原作1巻2巻)ではVRMMORPGを遊んでいた1万人ほどの人たちがゲーム内に閉じ込められ、そこから脱出するためにゲームクリアを目指すというのが目的だった。

黒幕はダンジョンアタックもののゲームを命がけで行わせようとしたのだが、実際のところ第1部の内容はプレイヤーを殺す敵を相手にする人間VS人間というデスゲームものに近くなっていた。
それは作中での中ボスがPK(プレイヤーキラー)であることからもわかる。

その後は黒幕の正体がわかり、それを打破して現実世界に戻ってくるというのがおおよその流れだ。
第1部の時点でも確かに現実→異世界→現実の流れは整っているのだが、異世界ものとしての要素は薄い。

以前に書いた分類に当てはめるならば『SAO』は

(1):「舞台装置のための異世界」

であり、異世界要素はサブジャンルでしかないからだ。
(関連リンク:「異世界転生ものとパロディ文化についての私見」)

主軸となるのは、あくまでも命がけのゲーム――デスゲームもの。
たとえ彼らが集められた場所が孤島であろうが火星であろうが、内容としては大差ないものになっていただろう。
第1部の時点では異世界要素は必ずしも作品の面白さ、魅力とは合致していない。

続く第2部(原作3巻4巻)、第3部(原作5巻6巻)も同じこと。
第2部は主人公のキリトが現実世界に戻ったあとヒロインを助けるために再びゲームの世界に入るというのが主となっている。

これは今回の例の中ではもっとも異世界もの(異世界での冒険活劇)に近いだろう。
メインの目的は囚われのヒロインを助けること、つまりはヒロイックファンタジーだからだ。
(ただしそれはあくまでも目的であり、作中で読者の興味を持続させたのは主人公をめぐる三角関係だと思うが話がそれるので割愛する)

第3部は打って変わって現実側の比重が強くなる。
ゲーム内で殺人事件が起き実際にプレイヤーが死ぬというサスペンスフルな展開で引っ張っていくので、現実への影響がとても強いだからだ。

当然ながらこれは昨今流行りと言われているような異世界要素とはあまり関係なく、むしろVRゲームものやゲームもの(デスゲーム含む)に近い。

『SAO』が正式に異世界トリップもの(異世界と現実を行き来する物語)の雰囲気を出すのはその後の原作7巻『マザーズ・ロザリオ』や8巻の短編集からだろう。
(なお、アニメ版ではこの順序が逆になっている)

7巻の『マザーズ・ロザリオ』編ではゲーム世界と現実世界との差を描くことに成功しているのだが、それはファンタジー的なものではなくSFネタとしての異世界(VRMMO世界での生活)だった。

短編集の話は純粋にゲーム世界で遊ぶことを中心にするなど、このあたりからようやく異世界もの(現実世界とファンタジー世界)の雰囲気が漂ってくる。


とまあこのように、SAOはたしかに異世界に行くものではあるのだが、その内容は千差万別。
第2部や短編集はいわゆる異世界もの(異世界での冒険活劇)と呼んでも差し支えないのだが、それ以外の話しでは異世界以外の要素がとても強くなっている。

設定に関しても第1部、第2部に出てくるゲーム世界はファンタジーものではあるが、第3部の『ファントム・バレット』は銃を主武装とする未来世界、つまりはSFが舞台となっている。

これらのようにメインジャンルから作中設定までさまざまに広がる『SAO』世界をまとめて例にして「異世界もの」というくくりをするのは乱暴の謗りを免れないだろう。


以上。
最後に余談のような後書きをば。

なぜこのようにメインジャンルとサブジャンルを細かくわけたいと思うのかといえば、議論の土台を作るためだ。
ジャンル論を唱えるときはお互いの定義が曖昧なままでは話を進めるどころではない。

そのため、自分なりに昨今流行となっている異世界ものの定義――メインジャンルとサブジャンルの違い――を2回に分けて書いてみた、というわけだ。

上記のように、自分は『SAO』は広義の意味では異世界ものではあるが最近のラノベ業界、WEB小説業界で口の端に上る異世界ものとは趣を異にしていると感じている。

もしも『SAO』のようなSFネタまで異世界ものに含めてしまえば、それはSFにおけるパラレルワールド設定すらも異世界ものの範疇に含まれてしまう。
こういった乱暴な区切りは単に一消費者が楽しむ分には問題ないのだが、ジャンルの定義や議論を行う場では不適切な名称だろう。

自分も知識不足を自覚しているため誤解が多々ある文章だとは理解しておりますが、少しでも議論が活発になれば幸いです。

――――――――
関連リンク。
雑記:「アニメにおける異世界転生ものブームという間違いについての指摘」
雑記:「異世界転生ものとパロディ文化についての私見」
雑記:「異世界ものとサブジャンルについての覚え書き」

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