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『子ひつじは迷わない 騒ぐひつじが5ひき 』感想。

ラノベ感想
05 /12 2012
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(2012/04/28)
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わりと面白い、ライトノベルミステリの第5巻。
連作短編のような、短編が何本か入っているような作品なので、そのすべてが良作というわけではないものの、毎回1本くらいは面白いものがある本作。
今回は、第2話の『々人事件』がとても面白かった。
ミステリなので、細かい感想を書くとどうしてもネタバレになってしまうので折りたたみます。

――――――――
感想リンク。
・『子ひつじは迷わない』1巻~3巻 感想。
『子ひつじは迷わない』6巻 感想。
人が死なないミステリであることを逆手に取ったような『々人事件』が見事。
タイトルに『人事件』とあり、登場人物が山田カインくんとアベルくんの兄弟。そして、ふたりの憧れの女性である帆場さん。
この登場人物とタイトルが並んだだけで、旧約聖書を知っている人ならば、だれもが殺人事件を思い浮かべることだろう。
(帆場=エホバなのも、少し考えればわかること)

それなのに、作中では殺人事件が起こらず、それどころかカインとアベルが仲直りまでしてしまう。
初読のときに、この作品が旧約聖書をモチーフにしているのはわかったものの、内容の意図するものがわからずに困惑した。
その謎解きが少しあとにやってくるのだが、これがまた鮮やか。

タイトルである『人事件』に、旧約聖書の登場人物。これらの要素が合わされば、殺人が起こるのは当然だ。それなのに、何も起こらない。そこに、違和感や困惑が生じることになる。
それは、読者が心のどこかに殺人事件を想定しているからこそ生まれる感情だ。
だからこそ、作中でも語られているようにこの作品が(※ 重度のネタバレのため伏字 ※)殺人礼賛(※ 伏字終わり ※)になっているのだろう。

このネタ自体も面白いのだが、注目すべきなのはそれを、人の死なないミステリである『子ひつじは迷わない』で描いたところだ。

ミステリと聞いて、多くの人は殺人事件を想像してしまう。本書を手に取った人の中にも、もしかしたらそういう人はいるのかもしれない。
ところが、蓋を開けてみれば本書はほとんどが悩み相談という、日常の謎がメインとなっていた。
もしこれに肩すかしを食らった人がいるならば、その人は作中で語られるように殺人を望んでいたということになる。
ミステリを読もうとしたのだから、そういう感情は間違っていないのかもしれない。だがそれは、はたして正しいことなのだろうか?

現代社会において、殺人というのが最も忌避すべき犯罪だということも、本書には書かれている。そのタブーを嫌うならまだしも、望むとは何ごとだ。
殺人なんて、起きないにこしたことはない。だからこそ、フィクションで扱うと、とても面白いものになってしまう。
『子ひつじは迷わない』は、この『々人事件』を使い、ミステリというジャンル、ひいては日常の謎というジャンルに対しての接し方や、そのありかたを示したのだ。

……ここまで感想を書いて、某ミステリ作家のある作品を思い出してしまった。
味わいとしてはよく似ている作品なので、紹介の意味も込めて書いておきますが、ネタバレになるので、イニシャルとタイトルを伏字にします。
イニシャルの時点で、その作品を読んでいないとわかったのでしたら、できればその作家の作品を先に読んで欲しいところです。
(※ イニシャル伏字 ※)
最近デビュー作がアニメ化された、国内作家のH・Y
(※ イニシャル伏字 ※)

このイニシャルに覚えがあり、すでにその作品を読んだと思う人は以下のネタバレを踏んでも大丈夫です。

(※ 上記作家の作品名が書かれているので注意 ※)
『愚者のエンドロール』
(※ 作品名のネタバレ終了 ※)

どちらも、とある一行で読者をハッとさせることを目的にした、すぐれたミステリですね。
両作品、両作者ともにオススメです。
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fujimiti