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『月見月理解の探偵殺人」4巻、5巻 感想。

ラノベ感想
05 /29 2012
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ミステリだったり、ゲーム小説だったりする、『月見月理解の探偵殺人』シリーズの完結編。

4巻と5巻はどちらも『探偵殺人ゲーム』というゲームを取り扱っており、内容も上下巻のような構成になっているので同時に感想を書きます。
この2冊は、間違いなくゲーム小説として名作ですよ。

ゲーム小説には、いくつもの味わいがある。それは、ミステリと一口にいっても、トリックを中心にした一発ネタを楽しむものや、ロジックを中心にして伏線の妙を楽しむものがあるのと同じこと。
ゲーム小説にも、参加者にゼロサムゲームをやらせて疑心暗鬼と裏切りを誘発させるものから、ポーカーや麻雀など既存ゲームを題材にしてスポーツのように楽しむものなど、面白さは色々だ。

本書『月見月理解の探偵殺人』は主に、伏線の妙とゲームのルールの隙をついて、登場人物や読者を欺くことに重点が置かれていた。
それがミステリ的な楽しみに繋がることもあるが、この4巻と5巻では、ゲーム部分に集中して配置されている。

ゲーム小説の魅力のひとつに、『読者と参加者の知識の差』がある。
これはポーカーでいうなら、主人公はフルハウスが出来ているけど、敵はイカサマをしてフォーカードを作っているというような、登場人物にしかわからないことと、神の視点からしかわからないことという、情報量の差からくるハラハラドキドキとした感覚のことだ。

本書では、主人公側が仲間と連携して相手を倒していく。
読者にとって、この連携は自明の情報なのだが、参加者はそれに気付けない。
これが、麻雀やポーカーなどのランダム性のあるものならば、相手にも一発逆転が用意されているので必勝法足りえないのだが、『探偵殺人ゲーム』は会話が中心となるゲームだ。
目的は事実を確かめることではなく、『監禁すべき犯人』という偽りの真実を作り出すことだ。手を組む集団がいれば、敵対する側はどうすることもできない。
この設定を上手く使い、主人公側は事実とは違ったことを口にしているのに、上手く場の流れのコントロールしていき、弱みを見せた相手を次々と餌食にしていく。この舌戦は、圧巻の一言。
ゲーム小説の面白さのひとつである、『読者と参加者の知識の差』が遺憾なく発揮されている。

この戦法のおかげで、ゲームは主人公たちが有利なまま進んでいくものの、そこはエンターテイメント。敵の反撃にあい、ピンチになるのはお約束。
これでまた、敵との舌戦が繰り広げられるのだが、そこで、本書はゲーム小説のもうひとつの魅力である『読者を欺くトリック』を持ち出してくる。

この『読者を~』というのは、上の方に書いた『ルールの隙をつく』などのように、参加者はいうに及ばず、下手をすれば主催者すら想定していなかった盲点をつくものだ。
この『月見月理解』シリーズでは、ヒロインの理解に『相手の考えを読む』といった特殊能力があるので、それが利用されるのは当たり前。もちろんそれは、敵対する相手も知っていることだ。
そのため、『読者を欺くトリック』には、もう一捻り驚きの展開が仕組まれているのだが、それは読んでからのお楽しみ。
そこには、上記の『読者と参加者の知識の差』で使われたような、心地よい足払いが再び用意されている。

このように、『月見月理解の探偵殺人』の4巻と5巻ではゲーム小説として真っ当な面白さを見せてくれたのだが、それは細部の舞台設定にまで行き届いている。
下手に細かい設定を作らず「強大な組織が用意したゲーム」ということで、ごくごくシンプルに参加者たちを命懸けのゲームに巻き込んでいくからだ。
前に『軽い感想』のときにも言及したことだが、『命を懸けたゲーム』と『殺人をゲームのように考える』は、似ているようでまったくの別物。
言ってしまえば、現実世界にゲーム要素を取り入れるか、人をゲームの世界に入れるかという違いだ。

1巻では実際の殺人事件の捜査にゲーム的な手法を盛り込んでいた。3巻でも、殺人事件にとある時間制限を用意して『探偵殺人ゲーム』の相談タイムのようなインターバルを用意していた。
これらのように、現実世界にゲーム要素を取り入れると、そこかしこで設定のおかしさが目につくようになる。それは、2巻では大きな違和感となっていた。
それが、4巻と5巻では、登場人物を主催者が用意したゲームの世界に放り込むことで、ゲームによる駆け引きだけに集中できるようになっている。
5巻からはその『ゲームの世界』という異世界が、より顕著となる。被害者が次々と増えていくのに、登場人物のリアクションは薄くなっていく一方だ。これは『殺人』よりも、『ゲーム』に主軸が置かれているからだ。
このおかげで、展開がスピーディーになり、読者もゲームの楽しみ(結末の楽しみ)に集中できるというもの。
ゲームの世界に、下手に現実を持ち込まず、徹頭徹尾ゲームの楽しさだけを追求している。
本来ならば気にしなければいけないはずの細かい設定を、「ゲームをするための舞台だから」とうっちゃってくれたからこそ、本書は優れたゲーム小説として完結することができたのだと思っている。

1巻から続いていた登場人物たちの問題もほとんどが解決されるし、ラストはキレイなボーイミーツガールで大団円を迎えるなど、ライトノベルで描かれたゲーム小説としては、トップレベルで好きな作品だね。
続きを作ると蛇足になるかもしれないけど、漫画化もされたんだから何かしらの新しい展開も欲しくなるよねー。

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感想リンク。
『月見月理解の探偵殺人』全体の軽い感想。
『月見月理解の探偵殺人』1巻 感想。
『月見月理解の探偵殺人』2巻 感想。
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