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『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』三上延

ラノベ感想
08 /09 2012
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
(2011/03/25)
三上 延

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MW文庫の日ミス作品、『ビブリア古書堂』シリーズの第1巻。

本を題材にしたミステリというのは、数多く存在している。
本屋さんを舞台にしたミステリでは、『配達あかずきん』がミステリフロンティアから。
古典作品を題材にしたものでは、『文学少女』シリーズがファミ通文庫から出版されている。
そういった作品と同じように、この『ビブリア古書堂』も、古本屋を中心にして日常の謎を描く、ライトミステリとなっている。

この日常の謎、つまり日ミスというのは、『青春の苦さ』や『人の悪意』を描くにあたって、とても相性が良い。
人を殺すのが目的ではなく、する理由もない。ただ、己の欲求を満たすためだけに、他者をないがしろにする。
そんな、誰の心にもあるようなちょっとした闇が増大して、ひとつの謎が生み出されていく。
事件性が乏しいゆえに、解決することもかえって難しい。この、日常を一捻りしたような感覚は、日ミスの魅力のひとつだろう。

本書『ビブリオ古書堂』でも、そのような悪意が中核をなしていた。
あまり書くとネタバレになってしまうので、トリックや事件の様子は説明できないが、本書の肝は一言でいえばこれだろう。

『なぜ、古本のためにそこまで真剣になれるのか?』

本に対して特別な感情を抱かない人ならば、だれだって抱く疑問。
そんな『当たり前』の疑問すらも、ビブリオマニア(書籍収集家)たちの『日常』の中では、愚問でしかない。それは『欲しいから』だ。

どれだけ付き合う時間を重ねようとも、どれだけ分かり合えたと思っても、この感覚を持たない主人公と周囲の考え方はまったく違うものとなる。
同じ『日常』と『日常』なのに、理解できない『謎』が生まれ、日ミスとなる。

ややもすればホラ-にもSFにもなりそうな、言葉が通じるのに決してわかりあえない人と人とのすれ違い。
それを丁寧に描いたのが、『ビブリオ古書堂』だ。
目を見張るほどの驚きはなくとも、丁寧な仕事が光る佳作です。
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