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『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』感想。

ラノベ感想
11 /14 2012
独創短編シリーズ 野﨑まど劇場 (電撃文庫)独創短編シリーズ 野﨑まど劇場 (電撃文庫)
(2012/11/09)
野崎まど

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メディアワークス文庫で活躍中の野崎まどが送る、なんだかよくわからない短編……というか、掌編集。

……えーと、なんだこれ?
『電撃MAGAZINE』に掲載されていた作品と、没ネタをまとめたものなのだが、野崎まど先生、ちょっとネジ外すしぎです。

電撃文庫を読んでいる人には、
「全編、『キノの旅』のあとがきのノリ」
といえばわかりやすいだろうか。内容からあとがき、裏表紙に至るまですべて、ナンセンスな雰囲気を貫き通している。

既存の野崎まど作品でも、会話のそこかしこでユーモアやら、ぼんくらなノリが楽しめたのだが、本作はそれだけで一冊押し通したというあたり、何ともかんとも。
端的に言って頭おかしすぎる(褒め言葉です)

個人的に笑ったのは、『第二十回落雷小説大賞 選評』や『爆鷹! TKGR』あたり。
『爆鷹!~』は、「鷹狩り⇒TaKaGaRi⇒TKGR⇒子供向けホビーっぽい!」という、酒の席での冗談をそのまま形にしたようなくだらないものをなんだけど、笑ってしまったのでこっちの負け。

『第二十回~』は雑誌に掲載されなかった没ネタなのだが、没になるのも頷ける酷さ。
架空の選評が掲載されている掌編なんだけど、ちょっとそのうちのひとつを引用して掲載してみます。

(※ 『野崎まど劇場』240、241Pからの引用 ※)

女の子にも落雷文庫――――――――――――――――――――宮園フルール

今年も落雷大賞の選考に参加できることを喜ばしく思います。最終選考に残った十作はどれも玉稿と表現するにふさわしい作品ばかり。選考時期は秋口でしたが、まるで春先のようなウキウキした気分で楽しく読ませていただきました。そういえば春に編集部を訪れた際に巨大な玉のような物が届いていましたが、あれは何だったのでしょうか。表面に文字がびっしりと書き込まれていましたが……アスキー・メディアワークスは謎の多い会社です。

大賞はほぼ異論無く『おぼろ豆腐少女~』。アイデアも然る事ながら、その構成力は見事の一言。ヒロインの少女が死んでしまい「ええっ! どうなるの!」と息を飲んだのも束の間、程無くして主人公も死んでしまうという怒涛の展開。物語は主人公の叔父に引き継がれていくのですが、この叔父のキャラクターが弱い。「本当に大丈夫かな……」と読者をハラハラさせてくれます。しかし叔父の死を引き金に物語は予想もつかない方向へ! ここまでで二〇ページというのですからまさに規格外の一作です。

そして私が個人的にプッシュしたのが落雷文庫MAGAZINE賞に選ばれた『かみがみ!』。日本神話をベースとした本作は登場人物がみんな美形の神様という女の子向けファンタジー(笑)。でも中身はテーマに頑ななまでに忠実で、美形のスサノオが美形ヤマタノオロチの八つの美形の首を酒樽に突っ込むと、美形の尻尾から美形草薙ノ剣が出てくるという徹底ぶり。パラノイアと紙一重の美形国産みは是非イラストで見たい! イラストレーターさん頑張って(美形)!


……引用しておいて何なのだが、やはり野崎まど先生はちょっと(ピー)だと思います。
こんな感じの架空の書評が、全部で五つ掲載された掌編。他の書評も、それぞれアレな面白さなのは保証します。

ちなみに、架空の作品の書評を行うというのは、ボルヘスが『伝奇集』でやったことです。その他にも、スタニスワフ・レムの『完全なる真空』という前例もあります。
本作はおそらく、それらのパロディなのでしょう。興味のある方は上記の二冊を読んでみるのもいいでしょうけど、本作ほどはっちゃけていないのでご注意を。

面白いのは、全体的に見て、雑誌に掲載されたネタよりも没ネタのほうが面白かったということ。
たしかに、没になるのも頷ける内容なのだが、それゆえに切れ味も抜群。
『ビームサーベル航海記』なんかは、普通にSFしているSFパロディの一種だし、『魔法小料理屋女将 駒乃美すゞ』は、編集者が「おっさん路線すぎる」として没になった、渋い作品。
これ、ラストでグッときてしまった人はおっさん確定らしいですよ?(不覚にも、グッときた一人です)
書き下ろしの『ライオンガールズ』も、そこかしこでいつもの野崎まどの雰囲気がでていた良い作品ですね。

あと、なんといっても外せないのは、とりを飾る『野崎まど帝国興亡史』
あの、クソ長い『ローマ帝国衰亡史』のパロディなんだが、それのオマージュ作品であるアシモフの『銀河帝国の興亡(ファウンデーションシリーズ)』までひっくるめてパロったという怪作。
野崎まどが生まれてから帝国を築き、宇宙時代にまで続いたその帝国が滅亡するまでを描くという、元ネタをそのまま掛け合わせたような作品。
元ネタは両作品ともかなりの超大作なのだが、それを文庫本一冊からはみ出ないようにして、見事に野崎まど帝国の栄光と衰退をまとめきった手腕には脱帽です。

読み終えたあとに何も残らないと言えるくだらない作品ですが、どこかで笑えることだけは約束できる一冊ですね。

(注:当記事には一部、誇張・作為・欺瞞・悪ふざけが含まれておりますのであしからず)

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野崎まど作品への感想リンク。
『独創短編シリーズ(2) 野崎まど劇場(笑)』

『小説家の作り方』
『パーフェクトフレンド』
『2』
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