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『演じられたタイムトラベル』感想。

ラノベ感想
12 /04 2012
演じられたタイムトラベル (メディアワークス文庫)演じられたタイムトラベル (メディアワークス文庫)
(2012/11/22)
土橋 真二郎

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まいどおなじみ、土橋真二郎によるサスペンス作品。
土橋サスペンスといえば、理由も説明もなく、登場人物たちが閉鎖環境でのゲームを強要され、そこで疑心暗鬼に陥っていく……というのがテンプレであり、持ち味になっている。

いままで発売された作品のほとんどがこのような発端となっているので、言ってしまえば、どれを読んでも途中の味わいはほぼ同じともいえる。
それでも、どの作品も高水準の面白さがあるのでついつい毎回読んでしまう……とまあ、そんな感じで持ち味が確立されている作家さんのひとりです。

それで今回の作品なのだが、意外といってはなんだが、いままでとはやや異なった雰囲気となっていた。
タイトルの『タイムトラベル』という単語から思わずSF要素を想像してしまうが、そうではない。本作品もまた、現実という地面に足をつけたゲームが中心になっていた。

たしかに、作中でタイムトラベルは行われるのだが、それはゲームの中でのこと。しかも、ゲームといってもコンピューターゲームではなく、いうなればお芝居のようなものでしかない。

どこかに閉じ込められ、ゲームを強要される主人公たち。
周囲からは敵が迫っており、なんとかして脱出しなくてはならない。
そんな状況で、彼らはゲームの内容を悟る。

時計の針を戻しました。さあ皆さん、脱出のために必要な行動を取りましょう。失敗したら、現在のあなたたちは死んでしまいますよ。

そう。このゲームは、設定上の時間だけを巻き戻し、過去を作り出していくものだった。
もし過去で誤った行動を取ったり、必要なアイテムを入手できなければ脱出が不可能となるし、矛盾した行動(過去に現在の物を持っていくなど)を行うと、ルール違反としてゲームから除外されてしまう。それはどちらも、死を意味している。
このようなルールの下で、登場人物たちは矛盾を生じさせず、また現状を打開して脱出路を探さなくてはならない。

この設定の面白さには、思わず膝を打った。
タイムスリップものは大好きなのでそれなりの数を読んでいると思っていたのだが、このようにゲームの中で過去に戻ったと仮定させて行動させる作品は、あまり例がないのではないか。

閉鎖空間で演技をさせる作品となると、いくつかは思いつく。 
ミステリの中からだと、岡嶋二人の『そして扉が閉ざされた』や、東野圭吾の『ある閉ざされた雪の山荘で』が該当するだろう。
しかしこれらの作品では、過去の事件を再現して真犯人を探すものであった。現在進行形で、過去と現在を行き来し、未来を作り出していくような作品は、やはり思い出せない。
(※ もし、他にも似たような設定の作品をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご一報いただければ幸いです)

この設定が面白かったので、途中まで一気に読んでしまったのだが、終盤からはやや失速といったところ。
たしかに面白いとは思うのだが、期待していた面白さとはやや違っていた。
ネタバレになるので伏字で書くと、

(※ ネタバレのため伏字)
土橋作品の魅力である相手に危害を与えられない心理戦ではなく、たんなる殺し合いになってしまった。

(※ 伏字終わり)

ところが非常に残念。
もし、ルールどおりに、矛盾を生じさせないでタイムトラベルを行うというサスペンス、もしくはミステリの雰囲気を最後まで貫いてくれたのならば、かなりのお気に入りになっていだろうに。

閉鎖環境でのサスペンスとしては中々面白いのだが、いつもの土橋作品のようなノリを求めている方にはあまりオススメできないかもしれませんね。(土橋作品は『扉の外』が一番だよなあ)

あ、でもあのオチはけっこう好きかも。
タイムトラベル作品に多く触れている人なら、あの結末もある程度予想がつくし、納得できますよね?

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感想リンク。
『FAKE OF THE DEAD』
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