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『BEATLESS』感想。+ジャンルを『終わらせた作品』について。

ラノベ感想
12 /14 2012
BEATLESSBEATLESS
(2012/10/11)
長谷 敏司

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『BEATLESS』はライトノベルレーベルから出版されたものではないのですが、あえてこのカテゴリで感想を書きます。
ボーイ・ミーツ・ガールもののライトノベルが好きな人には絶対に読んで欲しい作品です。

『円環少女』などの長谷敏司による、ボーイ・ミーツ・ガールとSFが融合した大傑作。
長谷せんせ、いままでの作品で一番ライトノベルしているじゃないですか! といいたくなるほど、恋愛にバトルアクション、そして近未来を舞台にしたSFと、面白い要素がてんこ盛りでした。

面白すぎる。もう、この一言で十分でしょう。ちょっとこれは、落ち着いて感想を書くのに時間がかかりそうだよ。
ハードカバー上下二段組み、650Pの大ボリュームということもあり、一週間以上もこの世界を楽しむことが出来、登場人物たちの息吹をとても長いあいだ感じていたような気分だ。
そのせいか、読み終わった後、半日は茫然自失で上の空状態だったよ。まだ、まともな感想が書けるとはとても思えない。

ちゃんとした紹介などは、後日別の記事で書くとして、いまはちょっと感情に任せて感想を書かせてください。

小説、漫画、映画、ゲームと、どのようなジャンルの娯楽でも、一定数以上の作品に触れてしまうと、その型が透けて見えてきてしまう。
たとえば、よくあるバトル&ラブコメものの少年漫画的、ライトノベル的作品だとすればこういうもののだ。

平凡な少年がヒロインと出会い、剣や魔法のアクションで読者の興味を引き、トラブルに見舞われ、強敵と戦い、ヒロインと協力して倒し、最後にはラブコメを持ってきてハッピーエンド……などなどなど。
先の展開が読め、ここでこう来ると予想が出来、実際にその通りに進んでいく。

ジャンルがミステリになると、より構造が透けて見えやすくなってくる。
密室を形成したハウダニットと、証言の矛盾をついたロジックを組み合わせたり、アリバイものと叙述トリックを結びつけたり……と、こういうことだ。
ひとつひとつの謎は魅力的でも、それはけっきょく、既存の作品で使われたものの組みあわせを入れ替えただけだ。

今も昔も、娯楽とはこういった入れ替えを行っては、新しい十把一絡げな作品を作り続けてきたのだろう。
そういったものは、よくいえば王道、悪くいえばテンプレートとして、飽きるほど接してきた。おそらく、これからもうんざりするほど出会い、読み続けることになるはずだ。

このような、見飽きたテンプレート作品を悪いと言っているのではない。
作品の構成や展開、トリックの組み合わせなどが自明だろうとも、細部の違い、作者独自のたくらみや魅力が作品に詰まっていれば、それだけで最後まで面白くなり、飽きることなく読み終えることが出来るのだから。
(余談だが、こういった娯楽を『飽きた』と感じる人は、些細な部分をあまり気にしないんだろうな)

そんな風に、作品とは多く接すれば接するほどに、その新鮮味、つまりは面白さを損なうことになる。
それでも、最初にそのジャンルに出会ったときの興奮や感動を忘れられずにいるから、いつまでも新しいものを読みたくなってしまう。どうせ、目新しい展開なんてないとわかっているのに、だ。

ただそれでも。
ときどき。本当にときどき、それこそ十年に一度くらい、この考え方が当てはまらない作品に出会えることがある。
面白くて面白くて面白すぎて、もう他のことが手に付かなくなるくらい、どうしようもなく面白い作品のことだ。
読んでいるあいだは頭がしびれ続け、早く先を読みたいのに永遠に終わって欲しくないと思うような、そのジャンルで最高の作品。
自分はこういったものを、『終わらせた作品』と呼んでいる。

これは、オワコン(この言葉も、最近はめっきり聞かなくなったものだ)というようなネガティブな意見ではない。
到達、もしくは頂上と言い換えてもいいだろう。たとえるなら、オリンピックの金メダルのようなものだ。
上記のように、テンプレートな作品というのは、既存の面白さをあれこれと切り張りして新しい物語にしているもののことを差す。
それは百メートル走で言えば、靴を最新式のものに履き替えては、0、001秒を縮めようと躍起になっているのと同じことだ。
無論、それは悪いことではない。だれだって、オリンピック選手を見て無駄な努力だと笑わないでしょう? 凄いものは凄い。面白いものは面白いんだから。

ところが、『終わらせた作品』は、そういった小さな努力を吹き飛ばすほどの、圧倒的な面白さを持った作品のことを差している。
百メートル走のたとえをそのまま用いるならば、9秒5を切ろうと必死になっている選手たちの横で、いきなり8秒台、7秒台のタイムをたたき出すようなものだ。
誰の目にも、そのタイムが一番だと理解でき、向こう十年間は突破されないだろうと感じるほどの圧倒的な違い。
それが、あるジャンルを『終わらせた作品』だ。

いままで、自分はこの『終わらせた作品』にいくつか出会っている。
そのうちのひとつが、青春・セカイ系ライトノベルの傑作『イリヤの空 UFOの夏』だ。
『イリヤの空』をリアルタイムで読んだ時、自分はボーイ・ミーツ・ガールでこれを越える作品は今後絶対に現れないと核心した。それほどまでに、面白く、完璧な作品だった。
その日から、十年あまり。ようやく、『イリヤの空』に並ぶほどの傑作に出会えた。それが『BEATLESS』だ。
この作品は、ボーイ・ミーツ・ガール。SF(人型ロボット、もしくは人工知能もののSF)。少年漫画的、ライトノベル的バトルアクションが奇跡のように融合した作品だ。

人間の感覚や運動能力を超えるロボ同士の戦いという、ライトノベル的バトルアクション。
少年と人間外の少女が出会い、恋をするという、甘く切ない恋愛もの。
そして、アナログハックという、ロボットもののSF界に一石を投じるような斬新な設定。

そのどれもが高水準であり、高品質。小説全体が、一部の無駄もないような長さと構成で完成されていた。
そしてなにより、美しすぎる冒頭の言葉と、ラストシーン。これにはもう、絶句するしかない。
いや、絶句なんて生優しいものではない。頭を撃ち抜かれたと形容してもよいほどの衝撃だ。言葉がなくなるどころか、日常生活に支障が出るほどのカタルシスが、そこにはあった。

『BEATLESS』を読んだことで、自分はしばらくのあいだロボットもので新しい感動に出会えないだろう。
楽しむことは出来る。過去の経験からしても、『終わらせた作品』に出会えたということは、そのジャンルを愛し、数多い作品を読んだ末に決めた一位だからだ。

ただ、これから読むロボットものはすべて、一位という表彰台の頂上にたどり着けないことがほぼ確定してしまっている。
それほどまでに、『BEATLESS』は面白かった。

『イリヤの空』が『ボーイ・ミーツ・ガール+セカイ系』というジャンルを終わらせた作品だとするならば、『BEATLESS』は『ボーイ・ミーツ・ガール+ロボットとの恋愛』を終わらせた作品だろう。

このような新作に出会えたことに、感謝を覚えずにはいられない。
長谷敏司先生。終わらせてくれて、ありがとうございました。
また、自分の中の一位が揺らぐような作品が生まれることを、心から楽しみにしています。


いくらでも感想を書けそうなので、週末ごろ(もしかしたら、来週も)に随時追加の感想を増やして行きたいと思います。

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感想リンク。
『BEATLESS』感想。(ネタバレなしの作品紹介)
『びーとれすっ』感想。
『BEATLESS』感想。SFとしての面白さ、アナログハックについて。
・アナログハックと『ターミネーター』について。
『BEATLESS』感想。ライトノベルとしての面白さ。
『BEATLESS』感想。(ネタバレあり)
『BEATLESS』感想。この作品がロボットものSFの最高峰である理由。
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