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北山猛邦『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』感想。

ミステリ・SF感想
01 /24 2013
猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条 (講談社ノベルス)猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条 (講談社ノベルス)
(2013/01/09)
北山 猛邦

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北山猛邦先生の最新作。
あー、なるほどなるほど。実験作というか、なんというか。悪くはないですね。

北山猛邦といえば、『城』シリーズみたいな大掛かりなトリックや、『少年検閲官』やら『私たちが星座を盗んだ理由』みたいな、童話のような雰囲気とその隣にある確かな現実という、独特な雰囲気が特徴な作家でしょう。

この『猫柳十一弦の失敗』(以下、『失敗』)は、『猫柳十一弦の後悔』(以下、『後悔』)に続く、シリーズの第二作。
このシリーズは、上記の作品のようなあらゆる意味でトンデモねートリックも、ふわふわした雰囲気も控えめとなっている。

探偵やら探偵助手が仕事として認められている世界。そこで起きる事件と謎。そのあたりの設定は、ややこちらの世界とは異なっているものの、雰囲気そのものはごくごく普通の日本。
登場する事件もトリックも、北山作品にしてはじつにおとなしい普通の(といってもおかしいが)連続殺人でしかないからだ。

『後悔』では、連続殺人とミッシングリンクを取り扱っていた。
その謎は、やや驚きや納得に乏しいものであり、たくらみは面白いけど作品としては微妙だったのだが、この『失敗』はちゃんと面白い作品に仕上がっていた。

もっとも、その『面白い』というのが『本格ミステリ』という意味ではなく、『探偵小説』としてのものだったところが、わりと人を選ぶかもしれない。
以下は、その『探偵小説』としてどう面白いかを、ちょっとご紹介します。

この作品は、探偵の設定がとてもユニークなものとなっている。
探偵、猫柳十一弦は事件を先読みし、犯人の犯罪計画を阻止することを目的としているからだ。
『後悔』では、中々に面白い設定というだけに留まっていたこれが、『失敗』では小説全体の奇抜な構成として、上手く作用している。
それを説明するためには、サブタイトルを引用するのがわかりやすいだろう。

(※ 『猫柳十一弦の失敗』目次より引用。 ※)

第一条 常識人でなければならない――大団円――
第二条、探偵を過信してはならない――真相――
第三条、探偵を裏切ってはならない――連続殺人――
第四条、情報をすべて記録しなければならない――奇妙な住人たち――
第五条、事件関係者と深い関係になってはならない――魅力的な謎――



この『第○○条』というのは、タイトルにもなっている『探偵助手五箇条』のことだ。本作のポイントは、そのあとに続く言葉にある。
ミステリ読みならばすぐにピンとくるだろうが、この順番、本格ミステリの王道パターンをまるっきり逆に辿っているのだ。

発端として『魅力的な謎』があり、その謎がある村には『奇妙な住民たち』がおり、『連続殺人』が起きては探偵を翻弄し、『真相』が看破されたあとに『大団円』が待っている。
……というのが、国内の本格ミステリにおけるひとつのパターンだ。これは、横溝正史が代表的だろうか。

この『失敗』では、第一章から事件が大団円を向かえてしまい、二章の時点で犯人にまで行き着いてしまう。
これで万々歳、物語はめでたしめでたしで解決……というわけにはいかない。
殺人が行われるだろうことはわかっているし、動機も犯人までわかっている。それでも、捕まえることが出来ない。まだ、犯人は犯罪を起こしていないからだ。

ここから、犯人の用意したトリックが次々と判明していき、目次どおりに第四章になってようやく登場人物の紹介が始まるあたりは圧巻というか脱帽というか失笑というか。
小説全体の構造にこだわる読者にとっては、よだれが垂れるくらい面白いものであることは間違いありませんでしたね。

このように、事件を逆回しに手繰っていくという手法と、猫柳の特徴である『事件を未然に防ぐ』という部分が上手く合致しており、探偵小説としてはとても面白いものとなっていた。
探偵だからこそ事件を突き止められたのだが、逮捕にまでは至れない。
この探偵のカッコよさと無力さは、いままでの北山作品にも見え隠れしていたね。

こういった特殊な構造をしているため、本格ミステリに見られる、読者に謎を解かせる要素や驚きはやや乏しくなっていた。
そのため、構構の面白さを楽しめる人や、探偵の魅力を楽しみたい人にこそオススメ出来る作品になっていたかな。

とはいえ、そこは北山猛邦。まいどおなじみ、図面を使った大掛かりな物理トリックは健在。
今回はやや小粒とはいえ、そのド派手なトリックは見ていて清々しい気持ちにすらなってくるね。

個人的には、『城』シリーズのほうが好みではあるものの、同作者の『音野順』シリーズが好きな人なら楽しめると思います。探偵たる猫柳と助手のクンクンのラブコメは、今回もてんこ盛りだしね。

今回もとても楽しめました。
このシリーズに限らず、北山作品は好みのものが多いので、次作品も期待、期待っと。
……ところで、2012年が終わってしまいましたが、『石球城』はまだでしょうか?

――――
『感想リンク』
北山猛邦:『少年検閲官』
北山猛邦:『人外境ロマンス』
北山猛邦:『ダンガンロンパ霧切』
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コメント

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探偵小説としての新境地は悪くない

肩肘張らず、力が抜けている感じがどう評価されるか、でしょうね。
好き嫌いはそこら辺が影響するんだろうなぁ。
個人的には緩いと思いつつはまったので・・・。

北山さんの作品をネットで調べていたら、北山さんを詳しく
解説してるサイトを発見したので、貼っておきますね。
http://www.birthday-energy.co.jp/
用心深い性格なんて、この手の作品にぴったりですね。

fujimiti