FC2ブログ

青崎有吾『体育館の殺人』感想。「たった一本の傘から導き出される、身震いするほどエレガントなロジック」

ミステリ・SF感想
02 /24 2013


第22回、鮎川哲也賞受賞作品。
鮎川哲也賞受賞作は毎年チェックしているんだけど、今年のはガッチガチにロジカルな作品だったね。

『この傘は、なぜトイレに残されていたのか?』

という、たったひとつの謎を手がかりにして、容疑者の嫌疑を晴らし、密室を解き、さらには犯人まで絞り込む手腕には圧倒される。

目撃者の証言から、この傘が犯人の残したものであることはまちがいない。
第三者が偶然に置き忘れたものでない理由として、傘が残された時間と雨が降っていた時間がある。

傘は、昼から午後三時までのあいだに置かれたものだ。
この傘を持っていた人物が何者であるにせよ、置かれた時間は昼から午後三時までのあいだなのは間違いない。つまりは、授業中に置き忘れたということになる。
そんな時間に、体育館のトイレを使う者はまずいないだろう。トイレなら、校舎にあるのを使うはずだ。

外部から来た何者かがトイレを使い、そこに傘を置き忘れたということもありえない。傘が置かれただろう時間、外は土砂降りだったからだ。そんな中で、傘を忘れるはずがない。
内部の者でもなく、外部の者が置き忘れたわけでもない。
よって、この傘は犯人が何らかの理由でこの場に置いていかなければならなかったものだということがわかる。

だいぶ端折ったものの、このような感じの傘に関するロジックがいくつも展開されていく。
この謎一本で、300Pの作品を押し通すってのはいまどき珍しいな。ロジック好きには、たまらない内容だね。

探偵役の裏染がアニメ好きであり、作中のそこかしこでアニメ関係の小ネタを口にするんだけど、それがまーっったく内容と無関係なのはやや気になったかな。
ミステリではけっこう、探偵に特異な設定が付加されるけど、それがちゃんと作中で生かされてるのって少ないよなあ。
『探偵ガリレオ』シリーズとか、『占星術殺人事件』の御手洗潔とか、『すべてがFになる』の犀川あたりはけっこう関わっていたかな?

ちなみにこの小ネタ、裏染が高校生ということもあり、ほっとんどがゼロ年代のアニメ、漫画、ゲームなどから取られているものだった。

「ISのOVAとDTBの二期見ていたら夜が明けた」
「……日本語で話してほしいんですが」


やら、段落タイトルの『俺の妹がアンフェアすぎて困る』など、幅は広いもののわかりやすいものが多かったかな。
どれもさらりと言っては軽く流されるので、わかってもとくには笑えず、わからない人には意味不明と、ちょっとしたキャラ付け以外の役割は果たしていなかったな。

まあそれでも、『謎』部分は間違いなく、最近の鮎川哲也賞で一番のお気に入り。
エラリー・クイーン、もしくは有栖川有栖が好きな人には絶対にオススメできる一冊だったね。
個人的にロジック重視なミステリは大好きなので、新作をチェックする作家さんが増えたって感じだな。
次の作品が楽しみ楽しみ。

――――――――――
感想リンク。
青崎有吾:『体育館の殺人』
青崎有吾:『体育館の殺人』元ネタまとめ。
青崎有吾:『水族館の殺人』
青崎有吾:『水族館の殺人』 元ネタまとめ
青崎有吾:『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』

『アンデッドガール マーダーファルス』
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

前作が好きなら、新作はおすすめ♪

新作「水族館の殺人」は楽しく読んでしまいました。
軽やかな学園推理小説の第2弾、面白かったです!

birthday-energy.co.jp/
ってサイトは青崎さんの本質にまで踏み込んでましたよ。専業作家ではなく就職することが彼の成長にとって良いんだとか。今後に期待です!

fujimiti