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『さくら荘のペットな彼女』10巻 感想。

ラノベ感想
08 /28 2013
さくら荘のペットな彼女 (10) (電撃文庫)さくら荘のペットな彼女 (10) (電撃文庫)
(2013/07/10)
鴨志田一

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シリーズの完結編。『さくら荘のペットな彼女』10巻。
最後まで読んでみると、このシリーズはやっぱり6巻までが一区切りだったんだなと思うしだいです。

アニメ版も6巻部分までしか作られていないけど、あそこで区切るのが物語としては一番美しいと思っているからね。


完結したので、シリーズ全体の感想でも書いてみる。
この作品は、6巻までの展開と、7巻からの展開はかなり違うものだと思っている。
どちらも、テーマである『夢と恋愛』というふたつの青春要素を取り扱っているものの、構造がかなり違う。
6巻までは二パターンの『恋愛もの』で、7巻からは『群像劇』に近い恋愛ものなのかな。


理由の説明。まずは、1巻から6巻までの展開から。
空太と仁さんというふたりの凡人(といっても、才能はあるのだが)が、ましろと美咲という天才を好きになってしまった、というところからこの物語は始まった。

相手のことが好きだけど、才能の差を意識してしまい、恋愛方面に一歩踏み出せない。
そうやって、青春部分の『夢』と『恋愛』にどうやって折り合いを付けていくか、という考えに対して二パターンのペアを見せるのが6巻までの展開だった。

6巻部分までだと、これは良い感じにダブル主人公になっている。
空太は夢をガムシャラに追いかけ、仁さんは恋愛と夢とのあいだに悩む姿を描くという、それぞれの考え方の違いを描いていたのでとても楽しんで読むことが出来た。


そして、7巻からの展開。ここから、雰囲気はけっこう変わってくる。
7巻からは3年生たちが卒業してしまい、新しく伊織と栞奈が入学してくる。それによって、登場人物の役割がちょっと変わっていく。
空太に後輩が出来たことで、仁さんのように相談を受ける役回りになったのは大きな違いでしょう。
空太に明確な目標が出来たことで、エネルギーの持って行き場を見つけたのも関係しているのかな。

登場人物の役割が変わったことで、テーマの見せ方もけっこう変わってくる。
空太もましろも、『夢』方面は軌道に乗り始めたので、作品は『恋愛』部分に重きを置くようになる。
(といっても、そう簡単に割り切れるものではないんだけど)

伊織はどこまで本気かはわからないけど栞奈のことに興味があるようで、栞奈も空太のことを憎からず思うようになる。
そんな新キャラの加入で恋愛要素が追加されるんだけど、空太はましろ、七海との関係にも決着をつけなければならない。

新入生を加えてさらなる恋愛模様を描いてくれたのだが、正直なところ微妙。
新入生たちの設定を一から説明をしないといけないのに、空太、ましろ、七海の三人は絶賛決着間際ときている。
そのせいで、7巻以降は場面ごとの展開にかなり温度差があるというか、ややとっちらかっている印象を受けた。

6巻までは、男性側が凡人、女性側が天才。どちらも同じように独自の悩みを抱えている、というようにわかりやすい構造だったのに、7巻からはちょっと趣が変わっちゃうからな。

なんといっても、伊織は夢についてはともかく、恋愛に関してはそこまで重きを置いていないことが大きな違いでしょう。これは、空太、仁さんとはかなりの違いです。

栞奈も、目の前の問題に一杯一杯で、夢やら恋愛ごとまでに考えが及べない状態だからなあ。
6巻までは、夢と恋愛部分が不可分といっていいほど密着していたのに、新入生ふたりからはそれが感じられなかったのも、面白さの勢いが削がれた理由なのかな?

そこからさらに、龍之介の過去にまで話を広げて、なんとかしてゲーム製作のチームを作るというのが10巻まで続いた。
けっきょく、ゲームを作る時間を取ったせいで空太とましろにすれ違いが起きて……。

とまあ、このような展開のあとに物語が完結する。
1巻から6巻と、7巻から10巻。どちらも『夢と恋愛』という部分は同じなんだけど、7巻以降は焦点がより空太に当たった、という感じなのかな?

これまた結末から逆算してしまうのだけれど、伊織と栞奈の存在というのは、空太がゲーム作りをするために必要なメンバーだったんだよね。伊織は音楽、栞奈がシナリオということ。
だから、7巻からは『群像劇』に近い恋愛ものだと思ったしだいです。

前の感想でも書いたかもしれないけど、6巻までは空太には『夢』を追いかけてもらい、仁さんには『恋愛』関連の話をさせるという構造だった。
これのおかげで、『夢と恋愛』がとても密接な関係として描かれていた。

7巻からもそれを受け継いだのか、空太には『恋愛』を、伊織には『夢』を追いかけさせるという流れになっている。
しかし、ちょっと空太たちの恋愛が煮詰まりすぎているので、新入生部分、下手すればゲーム製作部分(龍之介関連)までもが蛇足に感じちゃったのかな。

このゲーム製作も、やや迷走していた気がしないでもない。
読者からすると、空太がゲームを作るのなら、さくら荘の全員が開発に関わるのは当然なのに、そういった約束を最初にしないで、なあなあで進めながら最終巻付近でいきなり手伝ってもらうと、やや計画不足なところが目に付いた。

空太の目的が『何とか夢に一歩近づく』から、『作品を作る』へと変わったために作品の雰囲気まで変わってしまったというかなんというか。
このあたりも、自分の好みから外れた理由でしょうか。

10巻は、『夢』と『恋愛』の折り合いをどうつけるか? という部分は面白かっただけに、それ以外の要素がいまひとつだったために爽快感に欠けたかな。

ぶっちゃけると、登場人物たちの気持ちやその後を考えないで、あくまでも物語としての美しさを考えちゃうと

(※ ネタバレのために伏字 ※)
空太とましろが別れる場所で終わるのが最適。
(※ 伏字終わり ※)

と思わなくもなかったり。

そういうこともあり、6巻までは名作、シリーズ全体を通しては良作と佳作のあいだというのが総評です。


うーん、いまひとつ感想がまとまっていないな。テーマが好きな作品だけに、書けば書くほど語りたいことが出てきてこんがらがってしまう。

あとがきによれば短編集も出るかもしれないとあるので、そちらも楽しみにしています。
それ読んだら、もうちょっとまともな感想書けるかなあ?
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感想リンク。
『さくら荘のペットな彼女』6巻
『さくら荘のペットな彼女』7巻
『さくら荘のペットな彼女』7,5巻
『さくら荘のペットな彼女』8巻
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