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青崎有吾『水族館の殺人』感想。「アリバイ、ロジック、そして最後の一行!」

ミステリ・SF感想
10 /23 2013


『体育館の殺人』でデビューした作家、青崎有吾の第二作『水族館の殺人』です。
今回も、見事なまでにガチガチのロジックが決まっている。
折り返しの作者紹介文で「平成のエラリー・クイーン」と書かれているけど、まさにといった作風だね。

水族館で殺人事件が起き、容疑者が十一人に絞られたが全員にアリバイがあった。

ここからアリバイトリックを解明し、消去法フーダニットが始まる。
アリバイトリック自体は、読んでいてすぐにわかるほど簡単なものだったが、解かれることが前提なトリックなので問題にはならないでしょう。
本書の魅力は、その先にある消去法のロジックにあるのですから。

(『水族館の殺人』100Pからの引用)

『殺人であることははっきりした。いつ、どこで、どうやって殺したかも全てわかっている。だが〝誰が〟やったか、最も重要である犯人の正体だけが、謎のままだった』



と作中でも書かれているように、重要なのはハウダニット(方法)でもホワイダニット(動機)でもなく、フーダニット。
誰が犯人なのか、ということなのですから。

その消去法が圧巻。
本一冊、350Pをほぼすべて使い、たったひとりの犯人を追い詰めるという、惚れ惚れするほどの人工的な美しさに彩られていた。


「モップとバケツといくつかの手がかりと……あとは、古くさい論理の問題です」



という言葉からもわかるとおり、謎がすべてモップとバケツに集中しているところもじつに美しい。
前作の

「なぜ、現場には新品の傘が残されていたのか?」

ほど鮮烈な謎ではないものの、

「なぜ、犯人はモップとバケツを現場に残したのか。凶器は服の中に隠せたのだから、わざわざモップとバケツを持つ必要はない。犯人は、この両方を持つことで何かを隠そうとしていた。片手にバケツ、もう片手にモップを持てば掃除の途中だと誰でも一目でわかるだろう。そうやって、犯人はバケツの中にある何かを隠そうとしていたんだ」

など、モップとバケツから犯人が起こした行動を次々と推理していく様は、ミステリだからこそ味わえる快感でしょう。

事件を解決したあとに待ち受ける、裏染による動機の追及とラスト一行の衝撃など、どこまでもエレガントなミステリ。
この最後の台詞のおかげで、はじめて裏染がカッコよく思えたよ。


とはいえ。
謎部分は大満足なのだけれども、それ以外の部分は普通といえば普通。良い意味でも悪い意味でも、『体育館の殺人』と同じノリを突っ走った作品だったかな。

すでに続編が前提なのか、序盤に用意された卓球部の練習試合や、途中で登場する裏染の妹(無意味に百合好き)などは全体的に浮いているように思えなくもない。

しかし、まあ。
一見無駄に思えるこの探偵と語り部のやりとりやらキャラ付けも、改めて考えればそう悪くはないのかもしれない。

無意味は無意味なんだけど、これのおかげで下手に堅苦しくならずに、ライトな読み応えになっているからね。
謎部分がガチガチのフーダニットなだけに、箸休めとして機能しているとは思う。

前回と同じように、裏染の広いようで狭いネタなど、
(『七つの海のティコ』なんて、お前いつ見たんだよ)
(『スマイルプリキュア』は守備範囲内なのに、『スーパー戦隊』や『仮面ライダー』には言及しないのな)
人によってはチンプンカンプンな話題を深く突っ込まずにさらりと流すところも、『体育館の殺人』とまったく同じ。

こんな風な、登場人物どころか読者からもスルーされるペダンチズムというのは、ある意味ではヴァン・ダインや小栗虫太郎の踏襲と言えるのだろうか。
(言えるのかなー、言えないよなー)


過去の名作フーダニットの数々を読んでいると、そこかしこで既視感のあるネタではあったものの、
(※ ネタバレではないものの、一応伏字 ※)
有栖川有栖のアレとかアレとか。
(※ 伏字終わり ※)
やはり、ロジック重視のミステリとしてはここ最近の作品では抜きん出たものがある名作。

謎を解くことだけに特化した作品ということもあり、これからも応援したい作家のひとりですね。
次も楽しみ、楽しみ。

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感想リンク。
青崎有吾:『体育館の殺人』
青崎有吾:『体育館の殺人』元ネタまとめ。
青崎有吾:『水族館の殺人』
青崎有吾:『水族館の殺人』 元ネタまとめ
青崎有吾:『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』

『アンデッドガール マーダーファルス』
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