FC2ブログ

『名被害者・一条(仮名)の事件簿』感想。「もしも、山本弘が現代風のライトノベルを書いたらどうなるか?」

ラノベ感想
04 /27 2014
名被害者・一条(仮名)の事件簿 (講談社ノベルス)名被害者・一条(仮名)の事件簿 (講談社ノベルス)
(2012/04/05)
山本 弘

商品詳細を見る

『名被害者・一条(仮名)の事件簿』読了。
山本弘が今風のライトノベルを書いたぞー!

山本弘先生といえば、SF畑でもライトノベル畑でも活躍している作家さんですが、
(最近は、SF方面が中心だけど)
今回はもう、ライトノベルとしか言えない作品だった。
それも、『サーラの冒険』のようなファンタジーでも、得意とするSFでもなく、暇つぶしに最適なだらだらでグダグダな今どきのライトノベルチックなものと来たもんだ。

正直、胸を張って人に薦められるものでも、面白いと正面から言える類の作品でもないけど、
「もし、山本弘が現代的なライトノベルを書いたらどうなるか」
という実験小説としてはかなり興味深い。

ライトノベルでよくあるオタネタを随所に盛り込み、
(一条(仮名)は、北海道のファミレスの屋根裏に住んでいそうな声だとか。ぶっちゃけ、『WORKING!!』の山田で広橋涼)
コント調の会話劇と余談めいた地の文を楽しむのが中心で、お話らしいお話はとくになし。
それだけならごくごく普通の日常系ライトノベルなんだけど、山本弘らしく毒をそこかしこで混ぜ込んでいるのが見所。

作者は『神は沈黙せず』や『地球移動作戦』などで科学を理解しない人間を真っ向からバカにしていたけど、本作品はそういった作品からさらにオブラードを剥ぎ取って、と学会の書籍並みにあけすけに毒をばら撒いている。

バーナム効果という言葉を知らずに占いを統計の一種と思い込んでいるおばさんや、処女じゃなければ女じゃないと息巻く童貞、作家を目指しているくせに本を読まない学生に、果ては、

135P下段より引用。

ギリシア神話の男の神様の名前を女の子につける感覚も、どうかと思います。ヒーローに「アマゾン」とか「ガイア」とかつけるのと同じくらい変です。


と、仮面ライダーやウルトラマンまで含めて全方向に茶々を入れる山本弘節には笑いを隠せない。

そうやってバカにしつつも、「ライトノベル作家なんか、字さえ書ければ誰でもなれる」などと豪語する勘違い君に、

「ライトノベルではすでに異能力のパターンは出しつくされている」
(例:半径二メートル以内のパンツを消す能力⇒『パンツブレイカー』)
や、
「ライトノベルでは女の子になっていないものを探すほうが難しい」
(例:ニャルラトホテプ、空き缶、サナダムシなど⇒『這いよれ!ニャル子さん』『アキカン!』『寄生彼女サナ』)

など、公平な立場で作家になることの難しさを指摘しているところは見逃してはいけないでしょう。
あくまでも氏のスタンスは間違いを正すことであり、貶すことではないというのがよくわかる。


どこの層に向けてオススメすればいいのかまったくわからない本だけど、
(ミステリファンが読んだら壁に投げると思うし)
これはライトノベルレーベルで出版して欲しかったなあ。

奇跡や思い込みなんかは数字で消し飛ぶということや、痛い人間を客観的に見るとどうなるかってことを淡々と書いているし、ラストに用意された名被害者とはどういう存在に近いのかという、なんちゃってSFな解釈など、お軽いのに妙に深いネタが含まれているし。

氏の作風を知っている人で、最近のオタ知識に詳しい人が読むとそこかしこでニヤニヤ出来ると思います。
オススメ……とはやっぱり言えないけど、オススメ?(疑問系)くらいにはオススメ。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

fujimiti