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『時槻風乃と黒い童話の夜』2巻 感想。「童話をモチーフにした現代メルヘンホラーの第2巻」

ラノベ感想
08 /03 2014


電撃文庫『断章のグリム』のスピンオフ、『時槻風乃と黒い童話の夜』の2巻。

正統派な奇妙な物語だよねえ。
どのお話も心や家庭に問題を抱えている少女たちが、時槻風乃からの助言を受けたりしてさらに間違った方向に進んで行き悲劇に見舞われるというオムニバスホラー。

超常現象もSF・ファンタジー的なガジェットもなく、登場人物たちのすれ違いによる悲劇というあたりがじつにもの悲しくも美しい。

今回は、全編書き下ろしによる短編を二本収録。
『白雪姫』『ラプンツェル』と、どちらも『断章のグリム』で扱った題材だが、料理の仕方が違うあたりがとても興味深い。

『白雪姫』では白雪姫でも七人の小人でもお妃でもなく、鏡を中心にした悲劇にするなど、童話の新解釈もさることながら『断章のグリム』とまったく味わいが変わっているところがじつに面白い。
『断章のグリム』では、見立ての絵解きというミステリ要素を用意して、

「この童話の中で、もっとも恐怖を感じたのいったいだれだろうか」

と、童話の中の被害者を見つけると同時に、現在進行形の事件の犯人探しをするというエレガントな魅力があったものの、こちらはそれをミステリではなく、メルヘン(教訓話)に落とし込んでいるからね。

『白雪姫』において一番の悲しみを味わったのは嘘をつけない鏡ではないかという解釈から、「嘘をつけない少女」そして「世界で一番とはいえないが綺麗な女の子」を出したあたりがとても上手い。
人物配置だけで悲劇が予見されるあたりも、じつに童話らしいよね。

同じように、『ラプンツェル』(塔の上から髪を垂らして王子様と会うあれ)の現代風解釈もかなり決まっている。
これを現代の事情に当てはめれば、異性という情報に触れさせない厳格な母親と情報に触れなかったせいで無防備に育った娘の物語。つまりは、裏切りと執着である。
と、じつに綺麗に自論を展開させていき、青春小説的な百合要素と絡めて悲劇に向かわせるとか、甲田学人節全開。

メルヘンだよなあ。
いや、ホラーだとは思うしそれで間違っていないんだろうけど、この短編集の読後感はやっぱり童話のそれ。
グリム、アンデルセン、ペローなどの童話集、それも子供向けの絵本ではなく、ちくま文庫などに収録されたようなものを読んだあとの感じとほとんど同じだもの。
些細な勘違いや欲から失敗する人を残酷に描くことで、下手な綺麗ごとの何倍も心に響く物語になっているというやつ。

傷口から滴る血や裂ける肉などの痛みの描写(包帯がトラウマになりそうだ)や、母親によって無意識に洗脳されている子供などホラーはホラーなんだけど、メルヘン的な教訓話として読めるあたりがなんともなんとも。
作者いわく、自分の書く作品はホラーではなくメルヘンであるということだけどそれも納得(……できるかあ?)


それにしても、表紙の風乃さんが麗しすぎる。
『断章のグリム』だと可愛らしいという感じだったのに、こちらではもろレディといった美しさだし。
それなのに、睡眠薬と精神安定剤漬けのリストカッターというあたりがパネェ。

風乃さんって、『断章のグリム』でも過去に行ったことと作中内での立ち位置とでかなりのギャップがある人だけど、この作品でもそうだよね。
読み方をちょっと好意的に解釈すると、迷える女の子たちに助言を与える良いお姉ちゃんとして受け取れそうで困る。
(いや、『断章のグリム』でもけっこう助けてくれていたけどさ)

どの短編にも登場する狂言回しめいた人物もいることだし、このシリーズは続いて欲しいなあ。
そんなわけで、続刊希望です。

――――――――――
感想リンク。
『時槻風乃と黒い童話の夜』1巻
『時槻風乃と黒い童話の夜』3巻

『断章のグリム』1巻
『断章のグリム』2巻
『断章のグリム』3、4巻
『断章のグリム』5、6巻
『断章のグリム』7巻
『断章のグリム』8,9巻
『断章のグリム』10,11巻
『断章のグリム』12,13巻
『断章のグリム』14,15巻
『断章のグリム』16,17巻

『夜魔―怪―』

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