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『夜魔―怪―』感想。「電撃文庫『Missing』の番外編である、都市伝説を題材にした短編ホラー」

ラノベ感想
08 /06 2014


なんとなく甲田学人祭り真っ最中。
メディアワークス文庫から出版された、『夜魔―怪―』を読み返しました。

電撃文庫から出版されている『夜魔―奇―』の姉妹本であり、作者のデビュー作である『Missing』の番外編。
『断章のグリム』『時槻風乃の黒い童話の夜』は、ホラーなれどもあくまでも少年少女の青春物語が中心になっていたのだが、こちらは完全に怪奇現象が中心となっているのが特徴。

どちらの作風も恐怖を扱っているものの、『時槻風乃~』のほうはメルヘンめいた教訓話となっておりかろうじて救いの芽も見えるのだが、こちらは都市伝説による恐怖を描くことに力を注いでいる。

「白線の上しか歩けない」
「くまのぬいぐるみは悪夢を食べてくれる」
など、子供の遊びや都市伝説めいた言い伝えから続き、『白線』『ぬいぐるみ』というガジェットを極限にまで不気味に彩らせる雰囲気は絶品。

登場人物が狂言回しに会い恐怖に見舞われるなど、『世にも奇妙な物語』に代表されるガジェット型のオムニバスホラーな雰囲気がじつお見事。

甲田学人先生の文章は、正直なところ日常描写などはそれほど上手いとは思えないものの、恐怖を煽る部分だけが特化してバツグンに上手いと来ている。

この本でも、出るぞ、出るぞ、出るぞ、と煽りに煽ったあとにワッと襲いかかかってくる恐怖など、じつに読者の呼吸を読んでいるものだったし。
(68Pのシーンなんか、本を放り投げるかと思ったよ)

そういった恐怖描写だけではなく、お話もちゃんと面白い。
ホラーと恋愛ものの相性が良いのは小泉八雲あたりを読めばすぐにわかることだけど、本作の『接鬼奇譚』でもちゃんと恋愛ものと怪奇幻想譚がとても美しく融合している。

幽霊の桜と、その桜を見上げていた女性。
死んでしまった彼女に恋をした男性が、伐採される桜を残すために取った行動など、グロテスクなホラーなんだけどちゃんと恋愛ものしているあたりがとても美しい。
こういう、悲劇でしかないホラーのラストにあるわずかな救いという描写は大好き。

最後に用意された『現魔女奇譚』のナチュラルな狂いっぷりは、甲田学人節全開。
お父さんとお母さんへの朝の挨拶と一緒に、隙間の人やぺらぺらさんにも明るく元気に挨拶する幼女とか、ごく自然にメルヘンワールドを形成しているところなんかは読んでいる自分の正気を疑うくらいだし。
(SANチェック忘れるべからず)

メルヘンとメンヘルは紙一重という冗談はあるけど、この調子をシュールギャグにせずに不条理ホラー(メルヘン)な雰囲気に出来ているあたりは作者の力量だよね。
……あ、小人さんだ。

232Pより引用。

「ねえ。それ(人の前歯)、使いやすい?」
「おお、とても使いやすいとも。軽くて硬くて、とても鋭い。こんないいものを捨てるなんて、人間はなんてもったいないんだ」
「人間はみんな、たくさん口の中に持ってるよ」
「そうなのか。それなら人間が寝ている間に、みんなで行ってもらって来よう。あんなに捨てているんだから、わしらがちょっともらっても構わないな?」
「それはいい考えだねえ、小人さん」



あー、SAN値が下がる、SAN値が下がる。


久しぶりに読んだらめっちゃくちゃ甲田学人作品を読みたくなったので、これから『断章のグリム』と『Missing』も読み返してみます。
これらの作品を一度に読んで、発狂したり失踪しなかったら感想も書く予定。

――――――――――
感想リンク。
『Missing 神隠しの物語』
『断章のグリム』1巻
『時槻風乃と黒い童話の夜』1巻
『ノロワレ 参 虫おくり』
『霊感少女は箱の中』

夜魔―奇 (電撃文庫)夜魔―奇 (電撃文庫)
(2010/01/10)
甲田 学人

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fujimiti