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『夢の涯 封仙娘娘追宝録・奮闘編(4)』感想。「時間テーマ短編の良作とアンチミステリの佳作が収録された短編集の第4巻」

ラノベ感想
09 /27 2014
夢の涯―封仙娘娘追宝録・奮闘編〈4〉 (富士見ファンタジア文庫)夢の涯―封仙娘娘追宝録・奮闘編〈4〉 (富士見ファンタジア文庫)
(2002/06)
ろくご まるに

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ろくごまるに祭りの真っ最中。なので、気に入った巻の感想でもば。
『封仙娘娘追宝録・奮闘編』の第4巻、『夢の涯』
個人的には、本シリーズのベスト短編集だと思っている一冊。

この作品、短編も長編も基本的にはすべて主人公たちが特殊な力を持つ宝貝を探して回収するという形で進んでいく。
宝貝は仙人が作った道具なのでどれも特殊な力を有しており、中には文字通り物理攻撃からは絶対に無敵なものも存在するなど、とても無茶が利く設定が売りとなっている。

強力な宝貝相手には真正面からでは絶対に勝てないので、主人公たちが知恵をめぐらせたり、中にはとんちめいた卑怯紙一重な勝ち方やらあっけなさすぎる弱点をつくといった脱力オチなど、短編ごとに味わいが変わるのも特徴のひとつ。

バトル一辺倒ではなく、ときには恋愛もあれば人情話もあり、ファンタジーなのかSFなのかもわからない話もあるなどじつに話のバリエーションが豊富になっている。

基本的な流れがすべて、
「特殊な力を持つ宝貝をどうやって回収するか?」
という、ミステリでいえばハウダニット(解決方法)が中心になっているので、どんでん返しものが好きな自分にとってはどの巻もとても楽しめましたとも。

ミステリ好きからすれば笹沢左保著『宮本武蔵』シリーズの味わいに似ていると思うのだが、どうでしょうか?
(チャンバラあるしー、時代ものだしー)

 以下、個別感想です。
全部で5本の短編が収録されていますが、気に入ったものだけ記します。


●『夢の涯』
本書どころか、本短編シリーズのベスト作品。
むしろ、自分の中では時間をテーマにした短編の中でもかなり上位に食い込む作品ですよ。

作者は短編集第2巻のあとがきでも時間をテーマにした作品は好きと書いていただけに、この作品も非常に美しい内容となっている。

時間がテーマの作品はそれだけでアンソロジーが編まれるほど数が出ているのである程度展開に予想がついてしまうものの、いままでの『封仙娘娘』シリーズを読んでいればこそという深みのある展開は必見でしょう。
むしろ、これが最終回であるといわれても信じられるほどの綺麗な終わり方だったし。

もう一度自分の人生をやり直せるということは、生まれ変わりと同じである。
しかし、いままで過ごしてきた人生が幸せならば、あえて生まれ変わる必要はあるのだろうか?

これは夢を題材にした作品やループものSFなどで時折使われるネタではあるものの、本書のように達成不可能と考えられている宝貝探しを行っている和穂に突きつけるからこそ重みが出るのでしょう。

人が本当に恐れることは痛みや死ではなく、幸せを手放すことであるというテーマなど、時間を扱った作品だからこそ出来るビターな味わい。
タイトルの秀逸さやラストに待ち受ける殷雷の優しさとデレ、挿絵と合わさったラスト一行の美しさなど間違いなく本短編シリーズのベストです。


●『刀鍛冶、真淵氏の勝利』
地味に、アンチミステリの佳作。
本書最初の作品『暁三姉妹密室盗難事件顛末』に登場した探偵導果が再登場し、孤島で起きた謎の村人昏倒事件を解決するというもの。

孤島に蔓延する謎の奇病、しけによって閉ざされた孤島とミステリめいた道具立てがそろいながらも、そもそもにしてタイトルで犯人の名前をバラしているという、ミステリ好きとしてはアンチミステリという言葉がビンビンに反応するような短編。

そういった構成要素からしてアンチミステリの貫禄十分なのだが、結末もまたじつに人を食っている。
無意味に思える討論に調査、ありえないからこそありえるという納得しがたい推理に加えて、何も解決していないのだがじつは最善策という、まさにアンチミステリの名にふさわしい出来でしょう。
このもやもや感が残りつつも上手い結末に納得せざるを得ないのは、アンチミステリの醍醐味だよなあ。麻耶雄嵩のアレとかアレとか。

作者であるろくごまるに氏はミステリ好きなのか、どの短編もミステリの手法が盛り込まれているので大好き。
上手いミステリ作家って、謎解きが中心にある本格ミステリじゃないところにもミステリの味を盛り込むことが出来るからね。

その作者の志が現れているかのような導果の台詞、

196Pより引用

「なに、ありふれてるだけなら別に構わないんだが、
『どうだ、ひねったオチだろ』
と恰好をつけてるのにありふれているというのが、いかんともしがたいな」


は、つまらないミステリを多く読んでしまった身としては非常に頷けるというもの。
ただ探偵が登場したり、叙述トリックをポンと放り込んだだけの作品はミステリとは言わないんですよ?
と、世にある数多のなんちゃってミステリ群に向けて言ってやりたいものである。


そんなわけで、もりもりとろくごまるに作品を読み中。
次は『桐咲キセキのキセキ』かなあ?
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