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『独創短編シリーズ(2)野崎まど劇場(笑)』感想。「ぐだぐだナンセンスSF短編集の第二段。カバー裏のながーい小説もちゃんと読むように」

ラノベ感想
02 /21 2015
[インタ・ビウィ]
惑星クウィリーに棲む、体長数十メートルを越す四足獣。成獣は獰猛な叫び声しか発しないが、幼獣のときはまるで人間がインタビュウをしているときのような鳴き声をあげる。
そのため、もしインタ・ビウイに遭遇したときはインタビュウ形式で会話をし、幼獣の振りをして逃げるのが得策とされている。



――本書の紹介をお願いします。

ふじみち:第16回電撃大賞の際に『[映] アムリタ 』でデビューした野崎まど氏による二冊目の短編集です。電撃MAGAZINEに掲載されたものに加えて、書き下ろしやボツネタも含めたボリューム満点な一冊になっています。

――ふじみちさんは過去に1巻の感想も書かれていますけど、この本の評価は高かったですよね。

ふじみち:ええ。自分も十代のころは筒井康隆氏の短編などでナンセンスなSFに慣れ親しんでいたものですが、久しぶりにそのときのような読後感を味わえましたから。

――写真や画像などを使う悪ふざけめいた作品ばかりですが、これもSFと呼んでいいんでしょうか。

ふじみち:とんでもない。これはれっきとしたSFでしょう。十分にセンス・オブ・ワンダーを感じられましたし。

――そのセンス・オブ・ワンダーという言葉はSFの紹介のときによく聞くものですけど、具体的にはいったいどういう意味なんですか?

ふじみち:センスのオブがワンダーなんじゃないですか? 

――(……)

ふじみち:(……)

巨獣:グルルルル……?

――! え、えっと、面白くて読者を驚かせられればそれでいいということですか?

ふじみち:そこまでは言いませんけど、既存の枠に囚われないというのは重要だと思います。巻末に掲載されている『電撃文庫館人間消失事件』も、SFバカミスとして秀作だと思いますよ。本来は既刊紹介として扱われる部分なんですけど、それすらも小説のネタにしてしまうところには感服いたしましたね。

――電撃文庫に慣れ親しんだ身ですと、ああいう遊び心は時雨沢恵一先生によるあとがきを思い出しましたけど。

ふじみち:自分の場合ですと、それよりも先に筒井康隆氏の『上下左右』を思い出しましたね。これはアンソロジーの『SFマガジン700【国内篇】』に収録されているものなのですが、ひとつのアパート、二十の部屋でそれぞれの生活を同時進行で描くという手法が採用されています。枠に区切られながらも、枠を意識しないというところが似ていると思います。

SFマガジン700【国内篇】 (創刊700号記念アンソロジー)SFマガジン700【国内篇】 (創刊700号記念アンソロジー)
(2014/05/23)
大森 望

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――(差し出された本を見て)本当だ。似ていますね。

ふじみち:作者が意識したかどうかはわかりませんけどね。ともかく、SFはこういった自由な書き方をしてもいいという実例を若い読者に見せるのはよいことだと思いますね。ライトノベルはSFやミステリなど、他の歴史あるジャンルの作品の入門書としてもうってつけだと思っていますので。そうやって読者が過去の名作に興味を持ち、さまざまな作品に触れるのはジャンルの活性化にも繋がることだと思いますから。

――そうですか。それでは、最後に作者へのメッセージをお願いします。

ふじみち:今後の抱負とか新刊の宣伝じゃないんですか? インタビューの最後といったらそれですよね?

――ふじみちさんの本じゃないですし、それにあなたの抱負なんか誰も聞きたくないでしょう。

ふじみち:……それじゃあ、ちょいとぶっちゃけますね。このインタビュウの元ネタとなった短編で紹介されている『know』なんですけど、じつはまだ積んでいて読んでいな
巨獣:ギギャアアアアア!
ふじみち:うわぁ!

――インタビュウ形式にしているのに、巨獣が暴れていますよ!

ふじみち:しまった、こいつはインタ・ビウィじゃない。ブログ・レビウだ! インタビュウ風な書き方ではごまかせない!

――ど、どうすればいいんですか。

ふじみち:大丈夫。こんなこともあろうかと、書影を用意しておいた。これを出して、台詞の前の名前を消せば普通のブログレビューに見えるだろう。そうやって書けば、ブログ・レビウは幼獣と勘違いして襲ってこない。

独創短編シリーズ (2) 野崎まど劇場(笑) (電撃文庫)独創短編シリーズ (2) 野崎まど劇場(笑) (電撃文庫)
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と、いうわけで野崎まど先生による短編集の第二段『野崎まど劇場(笑)』の感想です。
さきほどのインタビュー形式な文章は別にインフルエンザで脳が破壊されたわけではなく、本書のパロディという名のパクリですのでお気になさらず。
元ネタが気になる方は、この本を買って自分の目で確かめてみよう。『野崎まど劇場(笑)』、電撃文庫から絶賛発売中!
(華麗なる宣伝)

で、内容。
基本的には他作品のパロディやダジャレを膨らませたようなバカネタ、写真や写植などを利用した文字媒体ゆえのお笑い小説という短編なんだけど、今回もSFとして読んでも十分に面白い。
その中でも、書下ろしであり巻頭を飾る『白い虚塔』が普通に面白くてかなり困る。
 
ネット動画によって、手術の状況が配信されている社会。
執刀する側は技術力をアピールすることが出来るし、人の目もあるので医療ミスも減る。
しかしその反面、アクセス数やコメントを稼ぐために心臓のオペばかりが人気になり、他のオペを軽んじるようになっているという問題も抱えていた。

主人公もネットに虫垂炎の手術の動画を投稿するのだが、人気もなくアクセス数も低い。
そんな姿を見かねて知り合いから心臓のオペを任されるようになるのだが、彼には同じ日に別のオペが依頼され……。

とまあ、主人公が「人気のために手術をしているのか?」と悩むあたりは、昨今の医療ドラマそのものの面白さがあった。金と命のどちらが大切なんだみたいなの。

このネタなのだから当然といえば当然というようなオチが待っているんだけど、そのあとに用意されたどんでん返しがとても上手い。
真面目に読んでいた読者ならあっけに取られるだろうオチなものの、冷静に考えれば当然のことだと納得できることだし、なにより、『白い巨塔』をもじったタイトルの意味が最後の最後でようやくわかるなど、SFショートショートとしてとても優れている。

このあたりの、現代技術を作品に落としこむ手腕はSF作家らしいよね。
ニコニコ動画を元ネタにした『ワイワイ書籍』や、ソーシャルゲームを元ネタにした『まごのてこれくしょん』なんかは、全力でバカな方向にアクセルを踏み込んだものだと思うし。

そして、1巻のときに賛否両論だったらしいボツネタコーナーは今回も登場。
個人的には、ボツネタのほうが全体的に尖っているので好みです。

『麻雀出エジプト記』なんか、元ネタの『麻雀放浪記』と『記』の一文字しかあっていねえし、というか、そもそも電撃文庫を読む読者は9割がた阿佐田哲也作品なんて読んでねえよとどっから突っ込んでいいかわからない。
(段落前にヒロポン打ったりしているところも原作そのままだし、なんか途中から神の奇跡多様して『ムダヅモ無き改革』みたいになっているし)

他にも、まさかの早川書房から出版された『know』のインタビューのボツネタまで披露するというサービス精神の良さ。
そもそも、インタビューのボツネタという時点で意味不明なんだけど、野崎まど先生は折り込みチラシのエッセイでも悪ふざけを多様しているのでこれにも納得。
(書き下ろしエッセイのはずなのに、いつのまにか宇宙人を退治していたのってメディアワークス文庫のチラシだったっけ?)

そんなわけで、相変わらず誰にオススメしていいのかちっともわからないし、オススメした時点で脳の中を疑われそうなぐだぐだナンセンスな作品だったけど、個人的にはけっこう好きなのでまた出して欲しいですね。
続編も楽しみにしていま

巨獣:ギギャアアアアア!

まずいな、またインタ・ビウィだ。すぐにインタビュウ形式に戻さないと……、

巨獣:ギギャアアアアア!

ふじみち:なんてこった。ブログ・レビウまで……。だ、だめだ、うわぁぁぁ!!!


インターネットが発達した現在、レビューは無料で読めるという認識が当然のものとなっている。だがその裏に、暇人の睡眠時間という尊い犠牲があることを知るものは少ない。

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感想リンク。
『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』
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