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『パニッシュメント』感想。「新興宗教とスクールカーストものを融合させた(暗黒)青春小説。ヤンデレが好きな人は読んでみればいいと思うよ」

ラノベ感想
06 /19 2015

ガガガ文庫の問題児、江波光則先生の二作目『パニッシュメント』

来週同作者の新刊が発売するのだが、そういえば学園三部作で『ストレンジボイス』と『ペイルライダー』だけ感想書いてこれは書いていなかったなと思い、読み返したので感想書いておきます。

うむ。後の江波作品を知っていると、それらの展開を予見されるようなものが詰まっているのでかなり興味深い。
このあと書かれる『鳥葬』からの葬式三部作で見せたような、とても怖いヤクザのケンカの仕方が登場したのもたしかここからだったし。

葬式シリーズを読んだときも思ったものだけど、このやり方は怖いよなあ。
先に殴ったほうが絶対悪という世間のルールを悪用して相手を追い詰めていく手法とか、ケンカの仕方が堂に入っている。
(裁判する気がないやつはケンカするなは名言)

その手法を説明するだけでもかなり見所満点なんだけど、それと新興宗教という題材に(暗黒)青春ものやらスクールカーストものの雰囲気を混ぜてちゃんとテーマを通しているところはさすが江波光則。

題材が題材だけに毛嫌いして読まなくなる人も出そうだけど、これは逆に宗教アレルギーな人こそ読むべきだね。
夢や目標と宗教を同じものとし、教師の立場は一歩間違えれば教祖と同じであるということで、新興宗教というデリケートな題材を扱っているのにちゃんと学園ものになっている上にとてもわかりやすく宗教のことが説明されているし。

なぜ人は宗教にすがりつきたくなるのかといえば、そこに不安があるからであり、それをなくすために信仰がある。
しかし、信仰の大小は目に見えて計れるものではないから、ついついお金という数字に頼ってしまう。

こうなると、不安を解消するためには貢ぐ金額を増やすしかないという麻薬的悪循環に陥るため、一度信者になったら洗脳でもしない限り目を覚ますことはないと、一般的に考えられていることの逆の方法が必要だと教えるところが面白い。

信者になるためには不安さえあれば十分だが、一度手に入れた安心を手放すには既成概念を壊す必要があるので、強硬手段に出る必要があるってことか。

こうやって、『保障のない人生に不安な人々』と『クラスに居場所のない少年少女』を同一線上にあるものとし、新興宗教と学園ものを結びつける手腕はお見事としか言いようがない。
よくもまあ、こんだけ扱いづらいもの同士をぶつけて破綻しないものだ。
(そもそも、江波光則作品では一般的にはあまり善玉として扱われていない左翼思想な間宮女史がデウス・エクス・マキナ的なお助け役になっているあたりが大概だけど)

この作者は単純な善悪で物事を語らないところがいいね。
顕著なところだと、ある場所を境に悪人だと思っていた人物が作中でもっとも善人に近い存在であり、被害者だと思っていた人物が加害者であったと綺麗な反転を見せているし。

他にも、
「イジメはいじめる側が絶対に悪いのだが、いじめられる側にも原因があるということは認めなければならない」
というよくあるものから、
「たとえ教祖が信者に何も売りつけなくなっても、彼らは自分の意思でこんどは現金を貢ぐだけだ」
とまあ、悪いのは「車で跳ね飛ばした相手に車椅子を売るような真似」であるとちゃんと割り切っている。
(しかもこれを、新興宗教の教祖自身に言わせるあたりがまたね)

この教祖の存在が、この作品をかなり特別なものにしているような気がするな。
神は信じているが奇跡は目にしたことがなく、自分は神でもなんでもないというちゃんとした自分なりの信仰があり、金の亡者でもガチガチの神秘主義者でもないというあたりかなり珍しい人物造形をしている。

神と信仰と宗教を一緒くたにしちゃってる作品が多いだけに、こうやってすべて別物だと考えており、求めているのはたったひとつでいいから奇跡(=神の実在)であると考える人がいるのは個人的に◎
そしてそれが、すべての発端とオチに繋がるところもとても美しい。


学園三部作では一番後味が良い作品だと思うので、わりとオススメできる一本です。
いずれ葬式シリーズの感想の続きも書きたい。
あの三部作は、江波作品でいまのところ一番好みだし。

最後に一言。
この作品の一番のツッコミどころは、折込チラシにあった作者のコメント、
「恋愛小説を書こうかな、と思って書いてみました」
だと思われる。
つっこんだら負けだぞ!
(たしかに、要素だけ抜き出せば幼馴染にお弁当作ってもらったりヤンデレな彼女が出来ましたという三角関係ものだけどさ!)

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感想リンク。
『ストレンジボイス』
『ペイルライダー』
『鳥葬 -まだ人間じゃない- 』
『ボーパルバニー』


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