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ラノベ感想:『断章のグリム』10、11巻「たくらみ自体は面白いと思うけど、いまひとつ上手く機能していない」

ラノベ感想
07 /23 2015

『断章のグリム』の第10、11巻。
『断章のグリム』の話題が続いたので、中途半端に止まっていた感想の続きを置いときます。

今回の題材は『いばら姫』であり、クローズドサークルもの。
町中にある家なのに周囲から隔離されているという特異な状況に加えて新キャラである〈友達の友達〉のリカさんと、同作者によるデビュー作『Missing』を彷彿とさせるような怪奇ガジェットに彩られた一冊。

読み返してみるとわかるけど、作者はこのエピソードからすでに最終巻までの展開をあらかじめ考えていたんだろうな。
上巻63Pの時点で、この夏休み中にいろいろと起こるみたいなことがほのめかされているし。実際に、ここから最終巻までのエピソードはほぼ繋がっているからね。

そんなわけで、個人的に『断章のグリム』シリーズで一番好きな要素だったミステリ部分はここからほとんどなりを潜めることになる。
おそらくは、作者の中で完結させるべきエピソード(登場人物の設定の消化)を優先させて、そこに物語を当てはめたからでしょう。
『人魚姫』や『赤ずきん』のように、ひとつのエピソードで語るべきネタをとことんまで語るというような感じからは遠ざかっているからね。

そうやって最終回を意識しているせいか、ここからグロ度もうなぎ登り。
一番グロいのは当然ながら最終巻のぱくぱくだと思ったけど、個人的にはこの巻にある肌の下から生えてくる植物やら、皮膚片だらけの水槽とかは読んでいてかなり血の気が引いた。

ホラー映画など映像のグロさはまったく平気な人間なのだが、文章でのそれはまったく別物だからね。
たぶんだけど、映画や漫画など映像・イラストのグロさは「その世界の物語」と思えるけど、文章で読むと「自分の体験」を思い出すことで嫌悪感を刺激されるからだと思う。

学人先生、日常的なものでホラーを描くからなあ。水槽とか風呂場とか、誰でも見たことがあるし触れたことのあるものを使って不気味さを演出するので、臨場感が半端ない。
お湯の温度に温まった赤ん坊の体とか、もうあったかいもの触れなくなる……。

そんな風にSAN値がガリガリと削られすぎる展開が満載だけど、お話自体は至ってシンプルな閉鎖環境サスペンス。
題材となる童話にしても、『いばら姫』と『眠れる森の美女』を合わせてストレートに進んでいった。
以下、軽いネタバレも含むので折りたたみます。

――――――――――
感想リンク。
『断章のグリム』1巻
『断章のグリム』2巻
『断章のグリム』3、4巻
『断章のグリム』5、6巻
『断章のグリム』7巻
『断章のグリム』8,9巻
『断章のグリム』12,13巻
『断章のグリム』14,15巻
『断章のグリム』16,17巻
以下、『断章のグリム いばら姫』のネタバレが含まれています。


本書最大のたくらみであろう、リカの存在についてはけっこう不発気味だと思う。
最初に読んだときは、リオ=リカになれなかったリカという説明でちょいとハテナという気分になったんだけど、読み返してみるとそういった伏線が多いことに気づく。
最初も最初、上巻の25Pのときから友達の友達としてリカという女性が出ていたんだね。これは、読み返さないと気づけないなあ。

最後のほうで説明されているけど、リカは世界中のどこにでもいて、そのすべてが悲惨な最期を迎える存在ってことでいいんだよね?

想像混じりになるけど、リカは〈断章〉によって『自分が死ぬ夢を何度も見る』ことになるが、じつはその死んでいる自分は本当に世界中のどこかに実在している。
時間も場所も違う、誰かの友達の友達としてそこかしこに存在するリカの中で、このネットロッジを管理しているリカはそれが夢ではなく〈断章〉によるものであり、自分はどこかでいまも死に続けていると気づいたってこと。

死ぬのが心の底から怖いと思っているリカだからこそ、何度も死に続けなくてはならないというあたりは〈断章〉の設定通りなので、たぶんこれで合っていると思う。

たくらみ自体は都市伝説を好む作者の作風と合致していて面白いとは思うものの、やはりいまひとつすべっている。
リカの〈断章〉がどういうものかわかっていなかったので、ネタが頭の中にするりと入ってこなかった。

よく考えると、リカは事実上無能力者とほぼ同じということになるんだよな。
つうか、よく考えないでも「自分が死ぬ姿を何度も夢に見る」っていうのは、一般的には特殊能力というより呪いの類じゃないかこれ。

最終巻あたりの展開を思うとリカはけっこう魅力的なキャラだっただけに、ここで登場させてその設定を即座に回収するというのはとてももったいない。
学人先生って、良くも悪くもキャラを使い捨てにするからな。そもそもにして、主要人物である颯姫ちゃんの時点でほっとんど出番ないし。

そんなキャラの使い捨てに関連したことだけど、勇路と瑞姫の再登場は素直に嬉しい。
『赤ずきん』のときは
「ロリっ子殺すなよ学人せんせー!」
とか叫んでしまったものだし。

この復活は予想外だったので、最初に読んだときは「学人先生が普通のライトノベルみたいなことしてる!」と驚いたものだ。信じてよかった!
(このあとメチャメチャ(ry

小中学生の恋愛未満なコンビとか大好物です。
しかし、再登場しても出番絶無&絶望的な生存率。
甲田学人先生、これ、ライトノベルですからね!
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fujimiti