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ラノベ感想:『犬と魔法のファンタジー』「就職活動小説にして登山小説であり、現代冒険者小説」

ラノベ感想
08 /07 2015

田中ロミオによる、夢も希望もないファンタジー。『犬と魔法のファンタジー』読了。

エルフやドワーフもいるし魔法もあるんだけど、技術が円熟しすぎて現代日本となんら変わりなくなっているファンタジー世界で甲冑という名のスーツを身に纏って就職活動に励む大学生の物語。あと犬(超可愛い)

なんというか、この説明だけでも、
「ガガガ文庫らしいなあ」
とか、
「田中ロミオらしいなあ」
という感想しか出てこない。直球な色物(作者談)というのも頷ける作品。

主人公が大学生なんで就職活動エピソードがかなりの紙面を割くものの、これがリアルすぎてめちゃくちゃ鬱る。
何十社も面接を受けては落ちそのたびにお祈りの通知を貰い、しだいに面接で話すことが本当のことなのか嘘なのか、そもそも自分が大学生活で何をしてきたのかわからなくなるところなど冗談抜きで気分が梅雨空になってくるっての。

過去に一度でも就職活動をしたことがある人は嫌な記憶を思い出すこと確定なので、落ち込んでいるときは絶対に読んじゃいけません。
(誰に聞いても、就活は二度と経験したくないと答える人生三大トラウマのひとつ)

そういったピンポイントな重苦しいエピソードのせいでちょいと読み進めるのが嫌になったものの、最後まで読むと綺麗に青春小説しているところはさすが田中ロミオ。

起伏らしい起伏も盛り上がりもなく、戦闘といったものもない世界なのによくもまあ面白く出来るものだ。
このあたりは、ベテラン作家の貫禄を見せているよね。いくらでも話を膨らませられるし、どこでも終わらせることが出来るという余裕が感じられる。

就職活動と登山のエピソードを結びつけるくらいは一般小説でもよくあることだろうけど(人生は山登りうんぬんみたいなの)、そこにファンタジー世界だからこその冒険者のエピソードを絡めるところもさすが。

本当に冒険が出来る世界であり、先史文明の遺産がどこかに眠っている可能性があるからこそ、それを求める冒険者は存在していられる。
しかし、そんな夢物語を達成できる人なんて数えるほどもおらず、冒険者の目的は宝ではないというところから続く結論など、じつに爽やかに終わってくれているし。

というか、途中に出てくる登山描写やファンタジー的魔境の描写がわりと真剣で「これ、何小説だ?」と読んでいて小首をかしげることしばしば。
(就活エピソードもたいがいだけどさ)

あとがきどおり、ひねくれた色物ではなく色物設定で王道を進んだという、真正直な色物だったね。
好みとはちょいとずれていたものの、わりと楽しめました。


以下、感想箇条書き。
・カタカナ言葉を漢字に変えているのとか、無駄にかなりの労力を使っている気がする。
黒冷糖は一瞬何かわからなかったけど、チョコレートでいいのか?
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