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山本弘『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』感想。「ビブリオバトルを題材にしたジュブナイルの第二作。今回のテーマは『恐怖』と『戦争』。『艦これ』を絡めてフィクションの重要性を語るところはお見事」

一般小説感想
08 /13 2015

本を紹介しあうビブリオバトルを取り扱った青春小説の第二段。
『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』読了。

今回のは1巻よりも好きだな。
1巻は山場を用意するためにあからさまな悪役を用意したものの、今回は純粋にビブリオバトル&青春小説という形になっていた。
1巻は1巻でビブリオバトルの悪用法を描いていたので悪くはなかったとは思うけど、個人的にはこっちの方向性のほうが好みにあっている。

今回のビブリオバトルのお題は「恐怖」と「戦争」

どちらも色々な切り口がありそうなものの、こう広げるかあ。
紋切り型になりやすい怖い話を、たんなる怪談ではなく生活保護を受けられない人という身近にある恐怖から、およそ人間がもっとも恐れるだろう恐怖にまで話を広げるところはお見事。

ビブリオバトル後に同作者による『神は沈黙せず』の名前も出ているけど、これも読み方によっては最大級のホラー小説だよなあ。

そして、本書のメインテーマである「戦争」
これに対するアプローチは山本弘の本領発揮といったところ。

戦争中の虐殺や不幸な死を忘れようとしたり陰謀論でうやむやにしようとすることへ怒りを見せたりするなど、メッセージをストレートに伝えてくる。
1巻のころからそうだけど、この武人の主張はかなり作者の意見が出ているように感じられる。

そういった重苦しい話を用意しつつ、『艦これ』の話題まで交えて現代青春小説にしているところが本書最大の見所。

『艦これ』は実際にあった戦艦や戦争を題材にしているだけに、不謹慎だという意見も出ているゲームである。
そのため、人によってはやたらとこのゲームを敵視することがあるものの、これが戦争を知る入り口になるということもまたひとつの事実。

これによって戦争を賛美する人間が出てしまうかもしれないという意見もあるが、そんなことはノンフィクションだって同じこと。実際にどの程度影響を及ぼしたのかなんていうデータは取れないんだから、悪影響うんぬんという意見は妄想でしかない。

フィクション・ノンフィクション問わず、それらに触れたあと受け手側が戦争を好きになるのも嫌いになるのもその人の自由。
一番悪いのは、知識を持たないことだという主張にはとても強くうなづける。

この『艦これ』を交えた主張の中で、もっとも際立っているのがこれでしょう。

196~197Pより引用

「大和の最期に感情移入する人の多くは――僕もそうだけど――決して二七四〇人の死者を悼んでいるわけじゃないんだ。大和そのものに感情移入しているんだよな。乗員じゃなくて、生命のない鉄の塊に」


「僕も戦争の実写映像は何度も観たことがある。戦闘機が撃墜されたり、艦が爆発したりする映像。あるいは広島に原爆が投下された瞬間の映像――実際に人が死んでいる映像をな。長門が沈んだビキニの核実験の映像も観たことがある。でも、そんなので泣いたことは一度もない。だって感情移入できないもの。
 だけどな、艦娘が沈む映像は泣けるんだよ。本物の人間の死よりも、ずっと」




しかし、これを読んでしまうと、
「自分なら、好きな本をどう紹介するか?」
とか色々と考えてしまうな。

ビブリオバトルには参加したことがないものの、こうやってブログにテキトーな感想をつらつら書いている身だけに本を紹介したいという気持ちはそれなりにあることだし。

そんなこんな。
ライバル校にミステリ好きな人たちも出てきたので、ミステリスキーとしてはそのあたりも注目したいところです。
続きも楽しみだな。

以下、感想箇条書き。
・ある人物が非童貞というあたりが山本弘らしいと思ったり。そういえば、とある女性も普通に彼氏持ちだし、このあたりも山本弘っぽい。

――――――
感想リンク。
『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』
『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』

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