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『ここは、冒険者の酒場』感想。「読者=きみに問いかける、懐かしくも新しいファンタジークイズ集」

ラノベ感想
09 /02 2015

『ここは、冒険者の酒場』読了。
ファンタジアBeyondでWEB連載されているものの書籍版。(公式サイトリンク)(ファンタジアBeyondへリンク

昔懐かしい、二人称(きみ=読者に語りかける)タイプの作品。
酒場で居合わせた面々が昔自分が出くわした難題をお互いに話し、どうやって切り抜けたのかを推理しあうというファンタジークイズ。

あとがきなどを読む限り、『五竜亭』というファンタジークイズものの形式に沿っているようなのだが、自分はそちらは未見。
なので、それよりもアイザック・アシモフのミステリ短編集『黒後家蜘蛛の会』を思い出してしまった。

どちらも、出題者が出した謎に答えてはハズレ、可能性をつぶしていって最後にもっとも鮮やかな解決を見せるというのがお決まりのパターン。

「洞窟でドラゴンと出くわしたとき、どうやって逃げるか?」
やら、
「見張りの厳重な城に忍び込む方法は?」
など、ファンタジー設定を上手く活用した問題の数々はとても面白い。

こういった、出題者が実際に切り抜けた答えのある問題から、かの有名なゴブリンのジレンマにも通じる答えのない問題まで用意されているなど、ファンタジー世界というものの難しさをちゃんと描いているところは好印象。

一番のお気に入りは、第三話の錬金術師クリウスの話。
ダンジョンの最深部にある石版が欲しいのだが、駆け出し錬金術師である彼にはそれを手に入れる力がない。

当然ながら、出入り口にはショートカットのための抜け穴などはない。
外壁をよじ登ることも不可能であり、ダンジョンそのものをどうこうするような力技も無理と来ている。
さて、目的の品物を手にするためには、どうすればいいか?

正攻法では絶対にクリアできない問題に対する、鮮やかな答えは必見。
これは、たんなるファンタジークイズではなく、そこに住む彼らという存在を意識しないと解けない名問題でしょう。
もしかしたら、世にある(ネタバレ)の数々も、最初はこんなちっぽけな理由から始まったのではないのかという、設定の広がりを見せるところをまたじつに良し。

酒場にいるキャラクターも魅力的。
メタネタ発言だらけなアカヒゲとか、闇に飲まれよとでも言い出しそうなオッドアイ魔王少女のネブラ、脳筋乙女騎士のシルヴィアや、女盗賊にイケメン剣士に魔法学校の学生に錬金術師に妖精などと、オーソドックなファンタジーに登場しそうな職業と王道性格、ネタ枠まで色々とそろっている。

最後まで読み終えると、なんだかんだでシルヴィアさんが一番印象に残ったし好みだったかなあ。
どう考えてもネタ枠にしか思えないんだけど、彼女メインのシナリオなど、どれもこれも一本芯が通っている性格はとても魅力的だし。
彼女を主役としたマルチエンドストーリーの女装(?)話しなんかは、ハートフルなオチも含めてこれまたお気に入り。

あとは、色物好きとしては食えない性格な吟遊詩人のレーヴァンや錬金術師のクリウスさんなんかも好き。
あ、ゴスロリわらわなネブラちゃんはペロペロかわかわ愛され枠ということで。やみのま!
(彼女の過去もとても気になるものだ。つうか、狼のことみんなスルーしてるんだよな)

WEB連載はまだまだ続いているようなので、これからも楽しみにしたいシリーズです。

以下、感想箇条書き。
・幕間コラムや脚注説明もかなり面白い。
武器や城などの説明は、かの『アイテムコレクション』や『シティコレクション』などを思い出す。
そして、昨今のファンタジー事情まで考慮してD&Dの今昔が書かれていたり、女騎士相手に特攻というオークさんの謎ポジションについてまで言及されているなど、いま蘇るファンタジーコラムという感じなのも好みだった。



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