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ラノベ感想:『Missing 神隠しの物語』「ホラーとボーイミーツガールが融合した甲田学人のデビュー作」

ラノベ感想
09 /05 2015

夏といえば怖い話。
というわけで、十数年ぶりに読み返す。甲田学人著『Missing 神隠しの物語』

久しぶりに読んだけど、すさまじいなこれ。
冒頭から幻想文学めいた調子で怪異が描写され、
(サブタイトルの時点で『桜の森の満開の下』だし)
学園ものかと思わせておいてすぐに神隠しが起きてホラー調になり、続けて異界についての講釈がえんえん続くという、およそ現在どころか発行当時のライトノベル界隈でもまったく見られないスタイルで物語が進んでいく。

この美しくも不気味な雰囲気は、オンリーワンの魅力だよなあ。
『断章のグリム』や『ノロワレ』でもかなり極まった恐怖描写だったと思ったものの、それがデビュー作でも健在どころかむしろこっちのほうが上のように感じたし。

作者の他の作品を知っているからか、以降の作品とけっこう文体が違うように感じられたな。
あえてそうしているのかはわからないけど、『断章のグリム』なんかは解決すべき問題が山積みだったためか淡白な描写が多くなっていたものの、こっちはもう思う存分やりたい放題に恐怖描写やホラー・オカルトへのうんちくを語ることだけに専念しているし。
(あらすじだけ抜き出すと、神隠しにあった友人を助けようというそれだけの物語だもんなこれ)

本物の異界の情報を知ってしまうとその時点ですべてがアウトという、ホラーのお約束である読者の現実を侵食する恐怖やら、異界は知らず知らずのうちに伝染・拡散するという、『リング』などでもお馴染みの設定など、ホラーとしての怖さは天下一品。

そうやってホラーとしても非常に完成度が高いのに、ちゃんとボーイ・ミーツ・ガールにしてライトノベル風に幻想怪奇譚をアレンジしているところは本当に上手いよな。

異界というこの世界を脅かしている強大で非常識な場所と、そこに住まう少女。そしてそこに惹かれる少年にそれを引きとめようとする部活仲間たちと、綺麗に学園ものしているし。

個人的には、ライトノベルというのはジュブナイルをベースにしてさまざまなジャンルの魅力を融合させられるのが特徴だと思っているので、この作品もとても好みにあっていた。

この世のものではない少女との出会いと、ラストに待ち受けるわずかな救い。
ホラーとしても、ボーイ・ミーツ・ガールとしても、名作に数えていい作品でしょう。

十年以上前の作品とはいえ古臭さはまったく感じないので、
(携帯電話にアンテナがついているのはさすがに懐かしくなったけど)
いまでもオススメ出来る一冊ですね。

――――――――――
感想リンク。
『夜魔―怪―』
『断章のグリム』1巻
『時槻風乃と黒い童話の夜』1巻
『ノロワレ 参 虫おくり』
『霊感少女は箱の中』
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